2022.9.21(wed)写真選び
休校明け、久しぶりの学校である。今日の午後からは本格的に文化祭の準備に入る。
いつもよりも長く感じた授業を終え、クラスの準備を抜けて、菜都奈は写真部に赴く。今日の場所は図書室だ。菜都奈が着いた時には部長の澤村、副部長の谷山、耕介、蒼佳が揃っていた。つまり全員。
「! 早いですね」
菜都奈が鞄を置きながら言うと、
「みんな今来たところだよ。顧問はまだ来てないけど、始めちゃおうか」
澤村はパンと手を打った。
「今日は共通テーマの写真の選定二十枚をみんなで選ぶ。これが終わったら、個人テーマの写真を五枚選んでタイトルと説明文を用意すること。この紙に書いて、額縁の下に見えるように貼り付けて。額縁は早い者勝ちだから先に選んでもいいよ」
菜都奈たちが担当した共通テーマは「放課後の学校」。
主に部活動の様子や、校舎内で駄弁っている帰宅部の生徒たちにポーズを取ってもらった。澤村と谷山の担当は「授業中」の写真。いろんなクラスの授業風景だ。二人は顧問と一緒に菜都奈のクラスにも来ていた。
実は菜都奈は先週の部活の折に、頼まれていた共通テーマの写真の印刷をした後、自分の写真も印刷しておいた。今日、みんながコピー機を使うのは知っていた。
印刷した共通テーマの写真を長机の上に並べて、全員であれやこれやと意見をする。
「まず各部活一枚は必須だね」
澤村が部活の写真を指差し、「これとこれとこれ、いい写真だね」と選ぶと、谷山も続いて「これ好きだなあ」と笑いながら一枚手に取る。
「あ、それは竹内先生がバイクで帰る写真」
菜都奈が撮ったものだ。カメラを構えている時に、ちょうど竹内が校舎の前を原付バイクで通り過ぎたのだ。あまりに姿勢がいいから蒼佳とひとしきり笑った。
「あ、特別科の授業も撮ったんですか?」
蒼佳が目ざとく特別科二年一組の写真を手に取る。
「そうそう! 撮りまくりだよ、特権だもん」
大量の写真の中には大量の柊が映っていた。真面目に授業を受けている横顔は恐ろしく整っている。澤村と谷山は「写真部入ってよかった」「えぐいカッコよかった」と写真を見ては思い出してはしゃいでいる。
「俺はこれ好きだな」
耕介が選んだのは花壇に水をやる女子生徒だ。
「その人のこと好きなんですか?」
「違うよ。こういうの理想の放課後じゃない? 漫画とかでよく見る感じの」
耕介が何の漫画を思い出しているのかは分からないが、確かに水やりをする女子生徒は清楚系で可愛い。多分三年の先輩だ。
授業中の写真には見覚えのある顔をいくつも見つけて面白かった。尽は真面目に一番前の席で板書をノートに書き写しているし、葉月は後ろの席で友達とカメラにピースをしている。
写真を選ぶのは簡単なようでなかなか絞り込めず、ようやく選んだ時には一時間が経過していた。
選ばれた写真を撮った人がタイトルと説明文を請け負う。菜都奈が撮った写真は三枚ほど選ばれ、合計八枚分のタイトルに唸った。ダウの写真はタイトルをつけやすいが、共通テーマは思いつきでつけるわけにはいかない。
それから三十分ほど悩んで、やっとタイトルと説明文を書き終えると、余った額縁から色味が同じものを選んで写真を入れた。
「額縁がつくと、一気に箔がつくよね」
「だね。けど菜都奈のその竹内先生の写真はミスマッチすぎる」
蒼佳はケラケラと笑って、写真を覗き見てはまた笑った。確かに竹内が額縁に入れられていると、腹の底から笑いが込み上げてくる。菜都奈は途切れない笑いを断ち切ろうと顔を上げると、外が薄暗くなってきているのに気づいた。
「! もうそんな時間? 早いなぁ」
「最近日が短くなってきてる気がする。でももうやること終わったから大丈夫〜! 明日からはクラスの文化祭準備に忙しいしね」
蒼佳が言うと、澤村が「そうそう」と思い出したように顔を上げる。
「次集まるのは文化祭前日、つまり明日の放課後ね。写真展の場所は特別棟二階の特進科一年二組の横の空き教室。パーテーションを運んで写真飾るから、一時間くらいは抜けるってクラスに伝えといて。集合場所はひとまず図書室で」
澤村は「終わった人から解散していいよ」と伝えると、一番に自身が立ち上がった。
「ということで、バイバイ! また二日後ね」
「あ、待ってよ澤村〜。私ももう終わるから、あと三分!」
谷山が澤村を引き留めて説明文をせっせと書いている。耕介もまだ悩んでいるようで、白紙が三枚ほど残っていた。菜都奈は蒼佳と「帰ろう」と合図をして立ち上がる。
「お疲れ様でした! お先に失礼します」
「うん、お疲れ様〜。また二日後よろしくね」
菜都奈たちは澤村に挨拶をして図書室を出ると、目の前の自販機で牛乳を買った。スーパーでは見かけない、缶の牛乳だ。風味もどことなく違うが、癖になる味で菜都奈は好んで飲んでいる。
牛乳を買ってちびちび飲みながら、菜都奈と蒼佳が校舎を出ると、すっかり夜になっていた。
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