2022.9.13(tue)ワンナイト人狼
真村に誘われて昼ごはんを空き教室で食べることにした。菜都奈と文香は購買でパン競争に参加して、メロンパンを獲得。それから自販機で飲み物を買い、空き教室に向かう。
教室には既に真村のグループがわいわいとお喋りをしていた。教室の机を六つ、ぴったりとくっつけて、囲うように真村、田沼、佐倉、新田が座っている。
「お待たせ。で、何するの?」
菜都奈は空いている席に座りながら聞く。
「人狼。人数多い方が楽しいっしょ? 昼休みで時間ないからルールは簡単にするけどいいよな?」
文香はメロンパンを齧りながら「ちょっと待って」と手を挙げる。
「私、人狼のルールあんまり知らないんだけど」
「あ、じゃあまずはルール説明するわ」
馬村は「今回はワンナイト人狼だから簡単」と言って人狼、村人、占い師、怪盗のカードを見せる。
「人数少ないから今日はこの四種類のカードだけでやる。昼のターンと夜のターンがあって、昼は話し合い、夜は役職持ちの時間。
で、夜なんだけど、まず人狼は目を開けて仲間がいるか確認するんだ。真ん中の山に人狼が入ってれば人狼は一人で村人たちと戦うことになる。占い師は一人選んで、その人物の役職を知るか、中央の二枚のカードを確認することができる。怪盗は誰か一人のカードと自分のを交換する。それぞれ持ち時間は三十秒、その間みんな目を瞑って耳を塞いでること。
それが終わったら昼のターン。みんなで話し合いをして、処刑する人物を一人だけ選ぶのな。で、処刑したのが人狼なら村人側の勝ち、二回処刑する人物を間違えたら人狼側の勝ち」
「えー、出来るかな……」
文香は難しい顔をする。
「ま、やってみれば意外と簡単だから。分かんなかったらその時言って」
説明を聞いている間に菜都奈もメロンパンを食べ終えた。真村はカードを配ると「自分のカードを確認して」と言う。菜都奈のカードは『村人』だった。特にすることはない。
全員がカードを確認し終えると、早速夜のターンだ。まず占い師の持ち時間三十秒、その後に人狼、怪盗と続く。
菜都奈は目を瞑って耳を塞いで、真村の三十を数える音で目を開けた。みんなどことなくうきうきした顔だ。
「じゃ、話し合い。まず俺は村人だった。占い師は誰?」
真村が一番に村人だと名乗り出ると、次いで田沼が手を挙げる。
「俺。占い師。真ん中のカード二枚は人狼と村人だった」
「私は怪盗で、菜都奈とカードを交換して村人になったよ……これでいいんだよね?」
文香が確認するように名乗りをあげる。
「オーケー。じゃあ人狼は誰だと思う?」
菜都奈は全員の顔を見る。みんな同じように人を疑る目をしていて面白かった。真ん中の山に人狼が一枚。よって今回の人狼は一人だけ。もちろん名乗り出るわけもなく、村人には開示できる情報もない。
村人は占い師の答えと各々の顔を見て推測するしかなかった。多数決で決まったのは佐倉。そして佐倉は『村人』だった。
「佐倉じゃないなら……新田か真村?」
菜都奈はひとつずつ整理しながら言う。文香は菜都奈と交換したから、菜都奈は今は怪盗だ。占い師の田沼は別と考えると、
「最初に真村が嘘吐いたとか?」
「え!? 俺嘘じゃないって」
文香がカラカラ笑いながら賛同する。
「あっやしー。人狼なんじゃない?」
「いやいやいや、俺は村人だから!」
真村は必死に否定したが、それがまた胡散臭く見えてしまってダメだった。結局、多数決で二人目の処刑は真村に決まったが……、
「ほら! 俺じゃないって!」
真村が見せたカードには『村人』の文字。これで完全に人狼の勝利だ。だが誰が人狼だったのかの推理はまだ続き、田沼が首を傾げる。
「え? じゃあ新田?」
「はは、俺……ん!? 俺のカード『怪盗』になってる……」
新田がカードをめくると、そこには『怪盗』の文字。怪盗は確か文香だ。
「文香、私と交換したんじゃなかったっけ?」
「んー、それが。私が『人狼』なの」
文香はそう言ってニヒヒと笑いながらカードをめくる。文香が持っているのは紛れもなく『人狼』の赤いカードだ。
「え、人狼初めてなのに初めっから大嘘吐いてたの? やっば」
新田がカードをヒラヒラさせて笑う。
「いや、私もびっくりしたよ。初めてなのに交換したカード『人狼』だったんだもん」
文香が口を尖らせるが、佐倉は「いやいやいや」と笑う。
「にしても肝っ玉だよ。初心者のチュートリアルかと思ったのに人狼で一人勝ちすんだもん、普通にビビるわ」
文香は可笑しくてたまらないと笑っているが、菜都奈は驚いていた。もし自分が『人狼』を引いたら、昼のターンであんなにも堂々と真村を突けない。文香は意外と肝が据わっている。
菜都奈は人狼は中学生の時にやったきりだった。久々で楽しくて、夢中になっているうちに昼休みいっぱい時間を溶かしてしまい、みんなで慌てて教室に戻った。その小走りする廊下ですら楽しくて、みんな笑い声が止まらなかった。
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