50-指導


師匠から話を聞いた。

池崎は人心掌握の力があると言ったが、精神操作も含んでいて、その精神操作により記憶を操ることも可能だったらしい。


どうやって調べたのかは詳しくは聞かなかったが、池崎を逃す手引きをした奴が外部にいたらしい。そいつのお陰で、取り逃すことになったと。だが、そいつは誰の記憶にも残っていないそうだ。

調査により、必ずいたということは分かったらしいのだが。流石に痕跡が残ってしまい、消しきれなかったそうだ。


「池崎自身にも記憶が残ってない。記憶操作の影響を消してから調べるつもりだが、記憶が完全に消えていたら別の方法を取るしかない……。過去視の能力に頼らない場合の別の選択肢は……」


俺の反応を待たずに独り言のように言っているこの師匠の言葉は、実は俺に対しての指導という意味合いが強かった。

誰の能力を使って具体的にどう達成するのかなどは勿論明言しないが、やり方はあるぞ、という風に俺に伝えている。


独り言のように聞こえることも、ちゃんと聞いておけ、という師匠からの無茶振りだが、もう慣れてしまった。


「何とかなりそうなんですか?」

「どうだろうな。既に捕まえた者たちからは、何も得られていない。大元の池崎の能力の仕様次第だ。ダメな場合は、外部の能力者の力を借りる必要があるかもしれない」

「そこまでですか?」

「その可能性があるというだけだ」

ピシャリと言った。これはもう話さないという合図だ。もうこれ以上師匠から聞けることはないだろう。




「良平、お前から見て古今泉百々華はどうだった?」

師匠から話題を振られた。さきほどの流れからは池崎についての情報は得られないが、こっちの方からまた何か得られるかもしれない。

「百々華ですか。そうですね」

古今泉百々華。俺に訳わからないという印象しか与えなかった女だ。だが、そのままわからない、と言っても、師匠に怒られるだけだ。何か絞り出して情報だと思えそうなことを言おう。

絞り出せ。

「百々華は自分の意志で池崎に協力しているかはわかりませんでした。妹のことは大切に思っていたみたいですけど」

そこまで言って、そうだ、と思い出した。

「はっきり言って古今泉百々華に関してはわからないところが多過ぎました。初めて見たときは裸なのに不自然に冷静で妙な威圧感を感じましたが、妹の未来のことを話すときは、妙な威圧感はなくなってたり。古今泉未来の話ではこの頃、百々華と話してなかったというのに、未来のことを知っていたらしいです。一貫性がないというか」

師匠は黙ったままだ。沈黙が怖い。

「参考になりますか?」

「ああ。古今泉百々華は能力は使ってなかったか?」

「使ってませんでした」

「そうか」

つい日和って、参考になりますか?と聞いてしまった。こんな弱腰な言い方、普段の師匠なら断罪ものだ。スパーンとはたかれるだろう。

だが、師匠はそれを咎めず、古今泉百々華の能力について聞いてきた。

思った以上に重要なことを聞こうとしているのかもしれない。


「古今泉百々華も能力者なんですか?」

「いや、その報告は受けていない。だからお前に聞こうと思った」

「なるほど。俺は能力の使用を感じませんでした。すみません、力になれなくて」

「いや、いい。お前が古今泉百々華を見張っていれば済む話だ」

まじスカ。

俺、あの人苦手なんだけどな。

「師匠は古今泉百々華を疑ってるんですか?」

能力者だと。あるいは、池崎を逃した人物だと。

「念のためだ。妹の未来が能力に目覚めたというのなら、地域上のことも相まって可能性がある」

師匠が言う「地域上」というのは、能力者が生まれやすい土地、という意味だ。

俺はこの学校の付近、または、この地域の能力による問題を解決しろ、と放り出された。

この地域は元々能力者が生まれやすい土壌がある。その原因が何かはわからない。俺がその原因を調べろ、と言われることもあるかもしれないが。

原因はわからないが、古今泉未来はこの土地で、能力に目覚めた。

それならもっと長くいる百々華も能力に目覚めていてもおかしくない、と。

そういうことだろう。

「ストーカーみたいに見張る必要はないが、学校で能力を使ったかくらいはお前ならわかるだろ」

師匠は昔から「感知能力を鍛えておけ」と常に述べていた。そのお陰もあって、俺は鍛え続けていた。だから、師匠は俺の感知能力をある程度認めてくれている。

それを活かす機会だ。

「そうですね。わかりました」

師匠に任されると嬉しい。



「そういえば、良平。そろそろテストなんだってな。殿子から聞いた。活動に支障が出るような点数では困る」

欠点をとるな。落第するな。ということだろう。


最後に釘を刺された。

大丈夫だろうか、俺。

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