第29話 タキシード仮面(仮面じゃないけれど)にせまった、あの、ツインテールの子は、ケンジョウモモカっていうらしい。え、モモカ…。モモカ…?

 とりま、良い感じ。

 「良かったね、レイカ?」

 「ちゃんとした事務所、なんだね」

 「うん」

 「…」

 母親だけは、まだ、無言。

 そして…。

 「質問、よろしいでしょうか?」

 誰?

 他の候補者からの質問が、タキシード蝶ネクタイに、キレッキレに、ぶつけられた。

 「面接って、どのくらいの時間、おこなうんですか?」

 「20分くらいは、おこなうようですよ?」

 「それ、長くないですか?」

 「え…」

 「その時間の根拠を、教えてください」

 「根拠…」

 質問に押された、タキシード蝶ネクタイ。

 「面接は、顔合わせ程度の意味でしかないのでしょう?」

 「ええ…」

 「面接時間が、長すぎませんか?アイドルとして、歌や踊りを長く見たほうが良いんじゃ、ないんですか?」

 「そ…そうですね」

 「面接は、早く、切り上げるべきじゃないんですか?」

 「は、はい…」

 「アイドルに大切な要素を、見逃してしまいませんか?」

 「…し、失礼、いたしました」

 すごいな。

 誰?

 「面接の時間は、2、3分で充分のはずです」

 「…」

 「候補者の皆の負担を、なくせるようにしてください」

 「かしこまりました。審査員の先生方に、伝えてまいります…」

 タキシード蝶ネクタイを、部屋の外に、追いやった。

 …や。

 やるう!

 他の候補者のことも、考えてくれていた子がいたよ!

 けど…。

 あれ?

 聞こえちゃったよ。

 「…うふ。成功、成功。これで、得意な動画を、長く、アピールできる。歌のほうが、得意だもん。面接なんて、だましイベント」

 うわ…。

 「…お、お待たせいたしました」

 タキシード蝶ネクタイが、戻ってきた。

 「応募者の、えっと…」

 「モモカです。ケンジョウモモカ」

 「では、ケンジョウモモカ様?先生方に、変更いただけましたので」

 折れたな。

 ふうん。

 あの、ツインテールの子は、ケンジョウモモカっていうのか。

 え、モモカ…。

 モモカ…?

 はて…。

 どこかで…。




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