焦る

 人生には避けるべき三つのAがある。「焦る」「慌てる」「諦める」だ。これは単に私のモットー的なものだが、どうしても焦る時はある。今、焦りに焦りを感じている。それも仕事ではなく、この字書きの世界において。大学の研究室の一つ上の先輩が、ある文学賞を取ったという。友人から聞いた時はそれはすごい、おめでたいと思ったものだが、喉元過ぎれば焦りが込み上げる。何せ、学年こそ上だが年は同じだったのだ(私は一度浪人している)。尚更、いつまで俺は冴えない物語で燻っているのだ、早く結果を出さねばと思ってしまう。勿論その拘泥は無意味なことは理解しているが思わずにはいられない。

 高校で読んだある古典文学は、「先達はあらまほしきこと也」と締めていた。何事も先輩は欲しい、という意味だ。今の私にできるのは、彼女を先達と受け止め、邁進することだけだ。それがまた歯痒いが、いつか結果になる。そう思い今日もキーボードを叩くのである。

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