第11話 恋文-神来月(十一月)

貴女は

何故

ここにいるのですか


耳をそっと触れながら

生温なまぬるい風にのってきた

桜の精か


美しい音を奏でながら

肌を刺す雨とともにきた

梅の精か



その鋭い爪で

私の心臓こころを掴み

決して離そうとはしない


地を這う

虫のように

私は醜く

見苦しいだろう


踏み潰され

跡形もなくなった私は

それでも

綿毛になって

貴女を探し漂う


貴女の足の指先を舐め

ねじれた私は

桜の木になり

梅の花を咲かせよう


貴女が

いつ何時なんどき

私の元へ舞い降りてきてもいいように‥‥



                來宮 理恵






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