なんとか空が明るくなるまでは

とまあ、俺は周囲の気配に意識を向けながらも、たぶん、数分程度ってえ感じで何回にも分けて睡眠をとってた。


一瞬、完全に眠っちまってたからその時に襲われたらアウトだったかもしんねえにしても、寝なきゃそれはそれで人間は死ぬからな。


それでも、なんとか空が明るくなるまでは無事にやり過ごせたみてえだ。


いや、別に『明るくなれば安全』ってえわけでもねえけどよ。昨日も襲われたのは昼の間だったしな。


んで、干し肉の方も、かなり持ってかれちまったみてえだが、残ったのも十分にあったし、しっかり乾いてるヤツについては、蔓で刺してひとまとめにして、首から吊るした。これでいつでも食える。


で、昨日の<ヴェロキラプトルみてえな獣>の仲間がうろついてないかどうか、<カマキリ怪人>がうろついてないかどうか、ザっと確認して、それから地上に降りる。


そうして、昨日、ちらっと見かけた<白い影>を確かめに行く。もちろん、見つかるかどうかは分かんねえ。それどころかもっとヤベえ奴を引き寄せることになっちまうかもしれねえが、どのみち、情報が少なすぎっからよ。その辺は把握しておく必要もあるだろ。知らねえでいきなり襲われるよりゃ、知ってて対策してる方が生き残れる可能性も高いしよ。


地上を歩くと、


「!」


首筋にチリッと刺さるものを感じて、俺は身構えた。周囲を窺うが、何もいねえな。いねえが、『いる』。この感じは、あの<カマキリ怪人>だ。どこかから俺を狙ってやがる。


気配は完全に消せてねえが、少なくともぱっと見じゃあ俺でも見付けられねえ。並の奴ならもう次の瞬間にゃあのカマに首をへし折られて餌になってても何も不思議じゃねえだろうな。ぶん殴った時の感触からすると、拳銃弾くらいなら止められそうなボディアーマーくれえの頑丈さはあった気がする。


ああそうだ。三十八口径程度なら至近弾でも貫通しねえんじゃねえかなってえ印象だったな。


とんでもねえのがいやがるぜ。拳銃でも確実にヤれねえとか、おっかない話だよな。


けどまあ、そんなことをいまさら気にしても始まらねえ。そん時はそん時だ。


で、あのヴェロキラプトルみてえな獣については、まったく見当たらねえ。この辺は昨日の奴らの縄張りだったのかもしれねえな。それが俺の所為でほぼ壊滅したってんで、姿を見せることもできねえって感じか。


それからさらにしばらく行くと、また遠くの木の上で白い影がちらっと見えた。やっぱ動物だな。真っ白な動物だ。こんなところでそんな目立つのが何してんのかはしらねえけどよ。


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