第24話 試練(アステルト視点)
「来たようじゃの」
「神様にあらせられますか?」
「いかにも。試練を受けに来たという事よいかの?」
「はい」
「では説明するとしよう。とは言ってももう三分の一はクリアしているのじゃが。」
あの熊は第一試練であったらしい。人の身では絶対に傷つけられない様に進化させて、深い森抜けたところに絶望を与える様にしたらしい。希望を持ち、後退するくらいなら死を選ぶ、覚悟の伴う決断を求める試練だったそうだ。第一試練からハード過ぎてお腹がいっぱいだ。これと同等以上の難易度の試練が二つ有るとか考えたくもない。
「二つ目の試練は、自分の意思でこちらに帰ってこれれば合格じゃ。準備はいいかの?」
「はい」
彼女への恋心でどんな苦痛でも耐えてみせると改めて決意した。次の瞬間視界が暗転した。
彼は理解しているだろうか?その恋心の大部分が超常への憧憬だという事を。
(!?)
声を出せず、身動きも取れない。目の前ではカレアを含む五人の女性がお茶会をしていた。
「それで、久々に人間に会ったんでしょう?どうだったのよ~?」
「結構気味が悪かったかな?悩みがありそうだったから話を聞いてあげようとしたら、急に解決したとか言って自己完結したし。それにそのくせ、また会えますかとか聞いてきたし。会う訳も無いけど。」
「男だったんですよね?恋愛感情とか芽生えたりしないんですか~?ロマンチックな恋愛話が聞きたいです。」
「一瞬しか会ってない男にそんな感情芽生える訳ないでしょ。それにさっき言ったじゃない、気味が悪かったって。」
「ま、そうよねー。」
客観的的に見たらそうだったのだろう。しかし、ここまでそれだけを頼りに進んで来た心を折るのには十分すぎた。神様が作った幻だと分かっていながらも、そのあまりに現実味のある光景に不安が溢れだす。
また視界が暗転した。
今度は体が動くようだ。それにベッドに寝た状態だった。
「ああ、起きたのね。おはようアステルト。」
「あ、ああ?」
隣にはカレアが居た。一瞬何が起こったかわからなかった。そして、理解した瞬間落胆する。神の試練の一環であることに。
「おはよう。」
「どうしたのよ?いつもより元気がないわね。それに、なんとなく雰囲気も違うような?」
「あはは、寝起きだったからじゃないかな?」
何とか誤魔化しておく。その必要があるかどうかは不明だが。
「やっぱり様子がおかしいわよ。何か隠しているでしょう?話しなさい。」
何とか誤魔化せていると思っていたが、夕食後にそう問い詰められた。だがよくよく考えると、朝起きたときに咄嗟に誤魔化したからそれを続けただけで、話してしまっても良いのかもしれない。
「実はここは本当の世界じゃないんだ。何なら君さえも幻なんだ。」
そう切り出して全てを話した。
「それで、アステルトはどうしたいの?」
重い話をしたつもりだったが、彼女の返答はあっさりしたものだった。
「それは、、、できれば帰りたいけど、、」
「本当に?本当に不確定な現実に帰りたいのかしら?貴方を確実に満たしてあげられるのはこの私だけよ。」
そう言って強く抱きしめられる。確かに現世なんかに帰る必要などないかも知れない。
「幸せならそれでいいじゃない。」
耳元で囁かれる。
「そうだな」
彼は気が付いているのだろうか?振られる事で今までの苦労を否定されたくない、自分が幸せになりたいという、自分本位の恋愛感情に。それがもたらした逃避の現状が今であることに。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
リアルが忙しく、なかなか筆が進みませんでした。(言い訳)
不定期更新なのでお許しを。
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