第15話 気絶の中で見た一週目人生

「うん?知っている天井だ。」

もう見ることは無いはずの配信者時代の家の天井だ。

「確か、実験台として異世界に転生して、、、、あぁァァ。」

感触はこびりつき、あの悍しい音は耳を離れない。あの薬を使っていた時は何も感じなかった。思い出すたびに頭がおかしくなる。何も感じなかった自分に吐き気を催す。

「忘れよう。」

もう過ぎだ事だ。何らかの理由によって帰ってきたのだ。それだけでいい。違和感なんて感じない。

取り合えずパソコンを起動する。

「動画見よ」



「さて、寝るか~」



「ァァァァァアアあ?夢か?」

瞼の裏に鮮明に写し出されたあの惨状。最悪の目覚めだ。もう寝るのは止めよう。思い出していいことは無い。


そうして、72時間が経った今エナドリと動画で眠気を誤魔化している。しかし、限界が来る訳で…。



「ァァァァァアアあ?」

また、寝落ちした様だ。そして否が応でも思い出す。

「何なんだよ。チクショウが!」

なぜ思い出す?いや、思い出すのは確定としてろくに寝ることも出来ない人生に意味など有るだろうか?死ねば解放されるのだ。何もかもから。こんな記憶を引きずってまで生きていたくない。とはいえ、素面で死ぬ勇気何て無い。酒だ。酒の勢いで死のう。

プシュ!


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パソコンと向き合う青年が見える。どうやら動画投稿サイトで配信しているらしい。

「スーパーチャットありがとう。えと、死んで全てから解放されたいです。え?初手から重い。でも、生きてたらいい事有ると思う。俺が炎上したときも全てを恨んだしこの世はゴミだとか思ったし。」

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「嗚呼、結局死ねない。それにしても懐かしい夢だ。相談配信もしたな。」

悩みを聞いてもらった様で少し楽になった。何日間かぶりにカーテンを開ける。

「はいどーも。精神崩壊中の''リストデル"です。」

いつものルーティンをこなし、気持ちを整える。そして無視していた違和感を確かめに行く。

「嗚呼やはりそうだったか。」

外を歩くと自分が覚えている景色は残っているが覚えていない景色は黒で塗り潰してある。窓から見た景色におかしな所もあった。ここは精神世界だ。

「まあいっか。現状維持で。」

多少回復したとはいえ、精神世界から離れる決断は出来ない。どうせ向こうでも寝たらフラッシュバックする。ならこの世界で一生を過ごすのも悪くない。取り合えず動画とエナドリで耐久だ。


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ピロン♪ピロン♪ピロン♪ピロン♪ピロン♪ピロン♪ピロン♪

鳴り止まないスマホの通知音。パソコンのの前で頭を抱える青少年。

「何で炎上したんだよ。」

逃げるようにネット小説のサイトを開いて、小説に没頭し始めた。

「俺も、転生したら全てが上手く行くのに。現世ゴミすぎ。」

青少年の呟きを否定するかのように思い出される。メイスが食い込んだ体が。首を潰した時の感触が。付随した悍しい音が。最後に現れたのはうなされ、今にも起きそうな青年の姿だった。

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「ァァァァァアアあ?はぁ、、、、クソが。」

何て言う忌々しい夢だ。炎上の後から親バレまでの間の情けない現実逃避を思い出すなんて。それによって自分の境遇を考えさせられるなんて。

「分かっちゃいるよ。このままではだめなことくらい。」

酒でも飲んで忘れよう。病的酩酊だ。


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「~~~~~~誠に申し訳有りませんでした。」

画面の前で頭を下げる青少年。

[これからもがんばれ。]

[再スタート応援しているよ。]

ディスプレイには青少年を許す様なコメントがほとんどだ。数字を追って過激な発言をして炎上した青少年は、何かを思い出した様な表情で泣きながら

「ありがとうございました。」

といって配信を終わった。

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「ああ、面白い物で楽しんでほしくて動画投稿を始めたんだったな。」

今回は、何で助けに行ったんだっけ?シルレーナ嬢のためだったっけ?でもここまでボロボロになっても後悔してない自分がいる事に気づいた。毎晩フラッシュバックするかもしれない。けれど助けた人の笑顔を見に行きたいと少しだけ思った。


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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

前話の後書きで期待させる様な事書いといてこのザマでごめんなさい。実力不足を痛感しました。











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