第23話 魔力

洋館にたどり着くとビエラが外で何やら精神統一していたが、シゲヒロたちが帰ってきたのを見て驚いていた。それもそのはず、出ていったときにはなかった馬車を引き連れて帰ってきたのだから。それが奴隷商の馬車だと気づいたビエラは怒りすら覚えていたが、まずは話を聞こうと落ち着こうとしていた。シゲヒロが到着するとビエラは詰め寄り、奴隷商の馬車がなぜこんなところに来ているのかを質問する。


「いやぁ。街を出る時に檻に入れられた子供達も見ちゃってつい子供達を購入しちゃったんだよ。本当は奴隷から完全に開放して好きに生きさせてあげたかったんだけどこの国の制度ではそれができないみたいだから、とりあえずここで働いてもらおうかと思ってね」


そう言うと、ビエラの怒りは収まった。それどころかシゲヒロとは長い付き合いになってきているが奴隷を買って喜ぶような人種なのかと疑ってしまったことを恥ずかしくなってしまった。


「それよりビエラは外で何をしていたの?」


「ん?魔力を練る特訓だ。騎士になるには魔力で身体を強化できないといけないからな。昔からの習慣で毎日特訓をしているのだ」


「魔力って誰にでも使えるものなの?」


「魔力は誰にでも宿っていると言われている。総量は人それぞれだが特訓すれば誰にでも使えるはずだ」


シゲヒロは魔力についてもっと質問したかったが、購入した子供たちと奴隷商人を待たせていることを思い出し話を打ち切った。そして子供たちを折から出して奴隷商は帰っていった。


そんな時に洋館の中からブラウニーが現れる。そして子供たちを見るなり起こった様子となり中へ引き返してドリアードを連れてきた。起こった様子のブラウニーからドリアードは言いたいことを感じ取ったようで話始める。


「ブラウニーがこの前早めに連絡しろっていったばかりだろって言っています。食事や服の準備が間に合わないじゃないかと。これに関しては私も同意見です。服は私が作成していますので」


この間、思い付きで馬を購入してきた件を思い出し、またやってしまったと反省するシゲヒロであった。とりあえず、汚れた状態の子供たちをお風呂に連れていくブラウニーの後を着いていき、途中で暇そうにしている孤児院から見受けしたソラヤとレラジャに頼んで女の子たちをお風呂に入れてもらうことにした。シゲヒロは男の子たちをお風呂に入れる。ちなみに子供たちは女の子四人、男の子二人の計六人だった。お風呂から上がると既に新しい服が準備されておりドリアードにも後でお礼を言わないといけないなと思ったシゲヒロであった。


お風呂から上がると、子供たちの分の食事も準備されており、皆で夕食をとる。子供たちは暖かい食事を泣きながら食べていた。お腹いっぱいになり眠くなったのか、子供たちが眠ってしまった後、シゲヒロとビエラは外で話をしていた。


「魔力の話の続きだけれど、子供たちにも扱うことはできるかな?」


「可能だぞ。私もあのくらいの年の頃から特訓していたからな」


「じゃあ子供たちに訓練を付けてくれないかな?」


「構わないが、子供たちを戦場に出すつもりなのか?」


「いいや。魔力を使用して発動する魔法陣があるのだけれどそれを使ってお金を稼ごうかなと。今後も奴隷や怪我人の看病をするにはどうしてもお金が必要だからね」


それを聞いてビエラは安心した様子であった。目的次第では訓練の話を断ろうと考えていたからだ。それにただで洋館に泊めてもらっているのも申し訳なく思っているので少しでも恩返しがしたいと思っているビエラである。この話は渡りに船であった。

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