第22話 奴隷

鍛冶屋からの帰り、クロスボウと改良した義足を受け取って洋館に戻ろうとしている最中に街に入る鉄格子を引いた馬車と遭遇した。今までそんなものは見てこなかったため気になって中を覗いてみるとそこには子供や動物の耳が生えた人間が閉じ込められていた。事情が知りたくなったシゲヒロは馬車についていく。すると馬車の中から人が現れ、こちらに話しかけてきた。


「お客様、あなたは奴隷をお求めですか?」


「奴隷?彼らは何か犯罪でもしたのですか?」


「いいえ。私どもが取り扱っているのは農民の口減らしで売られた子供や冒険者で借金を返せなくなって身売りした奴隷のみです」


シゲヒロは奴隷についてはある程度知識はある。それが犯罪奴隷出ないのであれば助けてあげたいと思った。


「それでその奴隷は何人いて、いくらになるのでしょうか?」


「子供が六人で金貨十枚、戦闘奴隷が四人で金貨十五枚でどうですかな?」


「私はこの街に来る途中にある洋館に住んでいます。そこまで奴隷を頂けるのであれば子供たちを金貨十枚で購入しましょう。それでまだ街に滞在するのであればお金がたまり次第戦闘奴隷を購入します。滞在しないのであれば諦めますがどうしますか?」


「いいでしょう。しかし私たちは奴隷の調達班です。今から奴隷商館にご案内しますのでついてきてください」


シゲヒロは馬車についていくと一般の人が立ち入らないエリアに馬車は進んでいった。そこを抜けると大きな商館が現れた。シゲヒロは馬を下りると、商館の入り口にいた男が手綱を引き取ってくれた。シゲヒロは馬車に乗っていた男に連れられ商館の中に入る。すると小太りの男が待ち受けており、男と目を合わせると挨拶を始めた。


「ようこそお越しくださいました。私がこの商館の支配人であります。ルーゼルと申します」


「ご丁寧にどうも、私はシゲヒロと申します」


挨拶を交わし終えると、男とルーゼルは内緒話をはじめた。それが終わるとルーゼルはシゲヒロへ問いかける。


「あなたはなぜ奴隷を必要としているのでしょうか?」


「偽善ですよ。奴隷として運ばれている人を見て見ぬふりをしておけなかっただけです」


「そうですか。それではこの国ロイージ王国での奴隷の取り扱いについてはご存じですか?」


「いいえ。知りません」


そう言うと、ルーゼルは少し困った顔をしたものの奴隷を扱いについて説明してくれた。この国における奴隷とは一般的に借金奴隷しかいないという。ただし一旦奴隷に落ちると解放されることはほとんどなく、また、主人が決まると契約書にて行動を縛られ死ぬまで働かされる。万が一にも逃げられないために契約書には必ず逃亡不可の条件を書かされ、犯罪も侵すことができないようにして引き渡すことが絶対条件である。奴隷に人権はないが他人の奴隷を傷つけるようなことが起こった場合は通常通り裁かれるとのことだ。


「つまり、奴隷の身分から解放することはできないと?」


「そうではありませんが、主人から離れることはできません。主人が奴隷解放を望むのであれば奴隷の首輪を外すだけで済む話ですので」


そう言われ釈然としないシゲヒロであったが、とりあえず当初の予定通り子供六人の購入を希望した。


「契約書の内容はいかがないさいますか?」


「必要最低限でお願いします。それと首輪は必要ありません」


「かしこまりました」


そうしてシゲヒロは子供六人を引き取り、馬車と一緒に洋館へ帰っていく。

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