第15話 蛇穴ダンジョンボス(1)
「グギャアァ!!!」
部屋に落ちてきた僕を認識した
その姿を見る僕はいたって冷静だった。あまりに突然の事態に混乱するでもなく、ゴブリンキングの威圧に負け、後退るのでもなく只々自分の敵の一挙一動に注視していた。
不思議と負ける気もしない。
「グギャァッー」
獲物である大剣を構えたコブリンキングは軽く1回跳ぶだけで7mほどあった彼我の距離を詰めてくる。
確かにハンター見習いが相対する敵としては強敵の部類。倒せるか、否かの間、とても良い相手となるだろう。
けれど、
「黒部さんより何倍も遅いな」
僕の反応速度は、黒部さんと模擬戦をしているうちに無理矢理鍛えられていたようだ。黒部さんは僕と模擬戦をするとき(勿論、十二分に手加減をしてもらっているよ)、一番遅く動いている時もこの何倍も速く動いてくる。
(…確かに黒部さん、戦えるとはい言ってたけどマジで何者なんだろ?ただの協会職員な訳なしなぁ)
「と、それよりも今は目の前の敵に集中しないとだな!!」
昨日までは、素早い動きを目で追えても体が追い付かなかったけれどクエストの報酬で身体強化をしてもらったおかげで、しっかりと自分の思いどうりに体が動かせる。
僕が意識を戦闘に集中させると、僕より2倍くらいデカいゴブリンキングの巨体が目と鼻の先まで迫って来ていた。
いいや、違う、僕が戦闘に意識を集中する時間をたっぷり使って漸く僕の目の前まで来たのだ。
「だから…遅いんだよ!」
僕はゴブリンキングが振り下ろしてくる大剣を盾で受け流し、体勢を崩させる。それと同時に、前へ踏み込みゴブリンキングの背後を取る。
「シッ」
背後を取った僕は、身体を反転させる勢いを使い転びかけているゴブリンキングのアキレス腱を狙い、剣で薙ぎ払う。此処で、心臓やら、首やら一撃必殺を狙ってもいいけど相手の肉は厚く、装甲のようになっている。止めを刺しきれなかった時に剣が抜けず事態は一変。こちらが不利になるだろう。
「GUGYAAAAAAA」
モンスターにも痛覚はあるようで絶叫しながらゴブリンキングは大剣をこちらに思いっきり薙ぎ払う。
けれど、感情に任せたままの大振りは大きな隙になる。
大剣の先に僕は居らず、ゴブリンキングの足元に潜り込んでいた。
「フッ」
地面を蹴り上げ、首に斬撃を与える。しかし、ゴブリンキングがほとんど無意識に仰け反り、寸でのところで攻撃を避けられる。
ゴブリンキングの大剣を持っていない方の手で殴りかかってくる。僕は宙に浮いているため当然、避けることはできない。仕方なく、向かってくる拳を盾で受け止め僕は吹っ飛ばされる。
(これはさすがに、身体強化が無かったら折れてたなぁ)
どうやら、僕の身体は相当強化されたようで特に怪我などは無かった。
僕が一回転してから起き上がると、ゴブリンキングはチャンスとばかりに上から大きく大剣を振り下ろしてくる。僕は、ソレを避け、すれ違いざまにゴブリンキングの脇腹に肉薄する。
傷は浅かったようでゴブリンキングは気にした様子は無く、最初のような失敗を犯すことなく後ろにいる僕に向かって剣を振るってくる。盾と大剣がぶつかり合い甲高い金属の悲鳴が部屋に反響する。
(くッ!流石に、大剣を小楯で受け止めるのは無理があるか!けれど、受け止められないということは相手もそれだけ力を加えているってことだ)
スっと力を抜き、相手がしたいように大剣を振り下ろさせてやる。でも、その軌道上には僕は居ない。張り合う力が急に消えたことで勢いのままゴブリンキングはずっこけてしまう。
大きな隙を利用して、ありったけの力を込めて武器を持っている手をぶった切る。強化された膂力によって、分厚い肉の装甲もバターのように抵抗なく切れていく。
「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」
腕を斬られたことにより、より大きな悲鳴を上げるゴブリンキング。それでもその目は未だ僕を捉えており、残った手を使って殴りかかってくる。
しかし、腕を失った影響は気力、闘志で無視できるようなものではなく攻撃は圧倒的に精細さを欠いていた。
元々、ゴブリンキングと僕には実力差があった。こうなってしまえば、ゴブリンキングは倒されるまでである。
死を恐れたのか、攻撃が当たる気配を見せなくなったのに焦ったのかゴブリンキングは拳を大振りし滑ってしまう。さらに、運が悪いことに転んだ先には僕がいた。
「ハアァツ」
自らやってくる敵の首を吹っ飛ばし、ゴブリンキングは動きを止めた。
「とんでもないハプニングだったなぁ~。まぁ、相手の攻撃を受け流す練習もできたし、結果で言えばプラスだったかな?」
少し休んでからゴブリンキングの魔石を取り出しながら僕はあることに気づく。
(ん?そういえば、こういう時こそクエストが発生するもんじゃないのか?普通は…)
『《クエスト》が発生しました。
《クエスト》 「
なお、報酬は新たなスキルとなっています』
「そうそう、そんな感じ!やっぱあるんじゃん!」
あれ?何かおかしくね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます