第13話 邂逅

 3階層を粗方探索し終えた僕は、4階層へと続く階段の前で少し迷っていた。


(黒部さんはとにかくモンスターを倒した証拠を持ってこいって言ってただけだから、今ここで引き返しても大丈夫だと思うけど…)


 なんて言ったて、僕は今日が初めてダンジョンに入った日である。人間、慣れないことをすると普段の何倍も体力を使ってしまうという。このダンジョンは、練習用と言われるぐらいダンジョンの中では危険度が低い。でも、だからと言って油断していると

死ぬまではいかないと思うが、怪我はしてしまう。

 一方で、自分の感覚としては普段の練習のほうがよっぽど体力を使い、怪我もしていると感じる。さらに、ゴブリンもさして強くなく、あと数段強い相手までなら一か八か倒せるであろう。倒せそうになくとも逃げることぐらいはできるであろう。

 ならば、次の機会に備えて様子見をするのもいいのではないのか。

 

(自分の体力的には、万が一があっても十分対応できると思うし、様子見ぐらいなら大丈夫かな?)

 

 僕は、少しでもアクシデントがあれば逃げかえればいいと判断し、亜種がどんなものか見てみることにした。





 階段を降り、4階層を敵に見つからぬよう警戒しながら歩を進め、相手側からばれるようなことなく観察できるような亜種がいるゴブリンの集団を探して自分の居場所がばれそうになってはそのゴブリンの集団とは別の亜種がいる集団を見つけ、観察してを繰り返していた。

 何回か繰り返していると、同じ系統の亜種と出会うことが多くなってきたのでここらで引き返そうかなと考え始めたとき、微かに剣戟の音が僕の耳の中に入ってきた。


(僕は、他のハンター見習いよりも速くダンジョンに入ることになったって黒部さんが言ってたし、僕の他に人は居ないと思ってたけど。どんな人が、戦っているんだろ?気になるからのぞいてみようかな)


 音の方向へ進んで行くと、何本か通路の繋がった他より幾分か広い部屋のような所が音の発生源だと分かった。

 部屋へと続く通路のうちの一つから身を隠しながら覗いてみると、部屋の中心で僕と同じくらいの歳と思われる金髪の男の子が片手剣と小楯を駆使して、ゴブリン・ソードマン率いるゴブリンの群れと戦っていた。


「《清輝横溢ラディアンス》」


 ゴブリンから距離を取った金髪が叫ぶと体から神々しい光が溢れ、その身に纏う。

 次の瞬間、僕は一瞬金髪を見失った。彼は、先程とは比べ物にならない速度でゴブリンの一体に近づき、その首を両断していた。

 息もつかぬ間に仲間が殺されたゴブリンが驚き、金髪から離れるよう後ろへと飛びのく。

 その様子を見た金髪は、おもむろに剣を頭上に掲げる。本来ならば、その行為はありえないものであり、致命的な隙を生む。

 が、しかし


「《宝剣一閃》」


 彼の放った言葉で隙は塗りつぶされる。

 掲げた剣に、身体に纏うのと同じような光が集まっていく。それは、相手に触れれば絶対に死ぬと確信させるほどのエネルギーを持っていた。

 金髪が剣を思いっきり剣を振り下ろすと光の濁流が起こり、ゴブリンを飲み込んでいく。光が収まった後には魔石すらも残っていなかった。


「チッ、んだよぉ。弱すぎてスキルの試し打ちの相手にもならないじゃねぇか。もっと上のランクのダンジョンに挑みてぇって言ってんのにハンター協会の奴らめ…」


 金髪が急に僕が隠れている通路に視線を向けてくる。


「おい、誰だぁ?覗いてんじゃねぇぞ!出てこい!」


 どうやら完全にばれているようなので、僕は素直に出ていくことにした。


「ご、ごめん。戦っている音がしたからどんな人がいるか気になって。見てみたら、すごい戦い方してたから」


 金髪は僕の目をジッと覗き込んでから、


「…そうか。今回は、許してやる。これ以上、ついてきたらゴブリンと同じようにしてやるからな」


と言ってから、別の通路の奥へと消えていった。


(今日はこれぐらいで帰ろうか。さっきの金髪と偶然鉢合わせるのも嫌だしなぁ。それにしても、なんだか嫌な奴だったな。初対面のはずなのにめっちゃ睨まれたし)


と僕は来た道を帰ろうとすると、「S・E感知」が後ろに急に何かが生み出されたことを感知した。

 僕が反射的に、剣を出しながら振り向くと剣と剣がぶつかり僕は体制を少し崩してしまう。

 後ろに飛び退き、どうにか態勢を立て直し相手を見ると先ほど金髪に倒されて消滅したはずのゴブリンたちが傷一つない状態で僕に襲い掛かってきた。





 

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