月下の密造者




 少年の夢想の熱量は

 少女の宇宙の奥深く

 白い星をちりばめる


 いつのころからか

 解き放たれた

 地平線目指し

 優しげな世界が

 羽毛の寝台に

 水銀の心臓を

横たえる時

少女の掌は

小さな宇宙を

包みこむ


朝の

獣じみた息づかいが

私を揺り起こす

つまらぬ冗談や

空笑いの並木路で

再び吊り下げられ

私の言葉は息絶えてしまう


彼等の歩く無限道路の向こう

遠く地平線は滅んでいく

影の重なり 型抜きの白

ささやかな荒野を巡り

風にほつれ  今日

化石の空のひとひら


月の光に隠れて

少年は少女の宇宙を

密造する

明日の分だけ

ただひとつ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る