風の不安



凝視みつめてきた風景が

凝視みつめる風景が

威力を失い

背中を丸め

凍えた平面の彼方に

生温かい慰めを求める

歪んだ心のように歪んだ指がまさぐる

くもった鏡の仏頂面


組み合わせた指がゆるやかに

うなずく

信仰のないリズム

保存された影だけが

ひたひたと

ひたひたと明日を占う


飢えを問えば

かろやかな満腹のリズムに

ひとつの言葉が

螺旋に私をとらえる

一定した振動のかすかな空白に

私は呟くのだろうか

誰?   と


肺臓から抜き取られた風景の

遠く佇む雑踏に

せわしげに対話する

いともあっさりと抜き取られていく風景の

連なり   断片のひとひら

ひとひらに 哀願する


語れぬ 悲しさ

語らぬ 悲しさ

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