思考の錯覚の思考
思考の錯覚の思考
荷造りが終わった 手
について想う時
私の背後を半裸の青ざめた女が
影を踏み
通り過ぎていくのを知っている
そして
あの照明の当たらない舞台奥の
暗がりでは
黒の鉛筆で 左眼を やたらと
引っ掻き回し
アクセサリーにしている
唇の乾いた 男が
(そうとも唇が乾いてなきゃ)
前のめりに
模倣されたボール箱へ
倒れこんでいく
(倒れるものか)
陰毛を
刈り取った
女の肉体が
麻縄で区切られ
血液の渋滞が
ねじれた皮膚の
分割された貧しさを
振り子のひと振れごとに
絡み取って膨張していく
と 麻紐の区画に従い
半透明のセロファンに性器だけ
を 除外して包まれる
回転式台座に固定された台座
そこには 取り残された
巨大なボルトの
同じく巨大である 鋼鉄製の
あの回転と反復運動を保ち続ける
ナットの翼がある
台座からはみ出した支柱には
力学的量感に打ちのめされた
決して均衡のとれない
三次元座標を気にし始めた
有機的動作が
(無論 力学的律動に支援される)
機械仕掛けで
偶然の型式を計算し
反復されることを強いられる
台座に手首を固定され
支柱の食い込んだ動脈の
ひとつ ひとつ
の 動きが
全体の膨張の過程を示し
逆立ちした女が
照明のまばたきの シャワー
の 断片を浴びながら
高速で回転する舞台が
支柱に与える力に伴い
股を開き
演じるのは 玩具のサーカス
同時に映写されるフィルムの
一コマ一コマ(全部にだ!)
男の寝息がシンメトリィに
繰り返し刻まれていく
囚となり
すでに梱包され
荷造りの終わった
手について想う時
まず最初に 梱包され荷札のついた
影が私の背後に
送り届けられ
なけなしの
方向感覚を売り渡した
旅人の私が
寝台の横の鏡に映る
関節と言う間接が
ゴムホースやブリキにすり替えられ
口を裂き呼吸を始め
呟きが 効果音を交えた
伝達組織に早替わりする
シンメトリィな
至大に醗酵する
繰り返しの単一色の
アクロバットに
腰までつかり
口を裂き裂かれた関節の
互いの断末魔の息のもつれを
何度も同じ抑揚と呼吸で
間接に聞いている
囚
と
なり
すでに
梱包され
荷造りが終わった
手について想う時
細い
支柱に
つながれて
揺れている
寝台の横の鏡に
姿を映す
星
の
間
を
涎を垂らし 飛び回る一対の
ボルトとナットに串刺しにされた
私の肖像を見る
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