第2話
まだ十時になったばかりだ。確かに今日の暑さはいつもと変わらず尋常でないと、ふらふらする自転車が教える。
平坦な道をタイヤが空回りするまでに漕ぎ続けたのに、家までまだ五分以上はある。
家どころか目の前の道もぼやけてよく見えなくて、その距離に絶望する。
死んでしまう前に行きつけのコンビニで休むことにした。
駐車場には一台の車も止まっていない。それだけ暑いということか。はたまたこの町が廃れているということか。
駐輪場ではないがとにかく日陰を探して自転車を止める。
鍵閉めるのも忘れ、駆け足でコンビニに滑り込む。
ひんやりとした空気が私を包み込んだ。
ぼーっとしていた頭が少しずつ生き返る。視界も鮮明になっていく。
そこに水筒のキンキンに冷えた水を一気に流し込むと意識がすっと戻って来る感覚があった。
入り口近くのお菓子のコーナーには目もくれず、アイスコーナーを目指す。
「んと、ぱるむぱるむ……。」
お目当てのアイスを探しショーケースを見る。ピノに、ガリガリさん、しっとるけん……片手で数えるほどのラインナップしか置いていない。
真夏の暑いときにこんなに少ないことに落胆する。
ふと横にあるスイーツコーナーに目をやると、ぎっしり様々な和洋のそれで埋められている。その大半をひんやり冷たいと銘打ったスイーツが占めている。
菫の言ったドーナツも、ポンデリングにオールドファッション、フレンチクルーラーの三種、味もそれぞれチョコやイチゴなど三種ある。
「アイスなんて――消えてなくなっちゃうかもね。」「――それよりドーナツとかの方が――。」
顔を横に振って頭に浮かんできた言葉を打ち消す。一旦買いもしないおつまみやらパンやらのコーナーを眺めつつ、もう一度アイスコーナーに戻る。
アイスケースを幾度とじっくり見たってラインナップは変わりはしなかった。だけどもしかしたら増えてるかも、と眺めても堂々巡りだ。
ふと後ろにある時計が目に入る。入ってから少なくとも20分は経っている様だ。
時間が経てば経つほどもっと暑くなって帰れなくなってしまう。
心を決める。
商品を二つ手に取ってレジに並んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。