5話 - Ⅱ
その時、手元の黒電話が鳴った。
見た目はアンティークを装っているが、内部には普通の盗聴対策だけでなく、魔技による思考侵入や、肉体操作による暗殺を防ぐ仕組みまで組み込まれている。ここまで徹底した防諜・防魔対策となると、最早その機能は最先端技術の結晶と言っても差し支えないだろう。
見た目はアンティークを装っているが、これにはいわゆる『普通の盗聴対策』以外にも、魔技による思考への不正侵入や、肉体操作による暗殺対策まで施されており、最早その内部機構は、最先端技術の結晶と言っても差し支えなかった。
とはいえ、素直に連絡用の魔機を使っていれば、そこまでの大幅改修はしなくとも良かったのだが、アンティークの収集が持ち主の趣味となれば、致し方あるまい。
その件のコレクターである老人は、髭をつまむ手を止め、けたましく鳴り響くベルの音色を味わうかのように、ゆっくりとした動きで受話器を掴み取った。
「もしもし――ほほう。とうとう見つけましたか」
老人は数度、頷きを繰り返した。
「それはもちろん『抹殺』と『略奪』の両立です。――ところで、マリオネットは順調ですか?……ええ、ええ。……なるほど。それは素晴らしい」
老人は口元を三日月に歪めながら、笑った。
「今回は素材が魔操者なだけに、優秀な働きを期待したいですねえ。――ええ。では、また後ほど」
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