vsディープソート Turn‐1
「サバサキさん。ご無事でしたか。ステージから姿をお見掛けして飛んできましたよ」
ハンターが約一ヶ月弱もの間、消息を絶っていたのだ。マーシュからすれば亡くなったと思われても不思議ではない。
「森であいつに助けられてな。まだ神様には見放されていなかったよ」
「そうです、彼は一体何者ですか? まさか本当にアンノウンだと?」
マーシュはアオバに興味津々ようで隣の席に浅く腰を下ろした。
「……………………そんなわけないじゃないですか」
サバサキはバーバラからアオホシ園から出る条件を提示されている。
――――『余計なことはしゃべるんじゃないよ。もし、口を滑らせるようなことがあればどうなるか分かっているんだろうね?』
「アオバは別の街のハンターですよ。プロ時代の話をしたら、ライセンスを取りたいって言いだしたので、連れて来ただけですよ」
「そうですよね。三大厄災を経験していない世代がこんな近くにいるとは思えない。まして、コーラル大森林のどこかで『魔女』が育てているなんて、眉唾ですよ」
三大厄災――世界を混沌に貶めた未曾有の大災害。そのうちの『
未だにその爪痕は癒えておらず、差別的な言動にまで影を落としていた。その状況を憂いた魔女は、アンノウンを森に匿っているという噂が近隣の町で実しやかに囁かれている。
「深追いは辞めておきましょう。ですが、店に迷惑が掛かるのは困りますよ」
「ライセンスが取得できれば、大人しく退散するよ。むしろ驚いたのはアイツの実力だ。まさかDIVEで一本取られるとはね」
「ほう、大会にも出ていた貴方が? それなら『
「その話はやめてくれ、黒歴史だ。それよりディープソートを当てるなんてマーシュ店長も人が悪い」
「彼女がDIVEするとなれば、会場も湧きますから。この空気なら心無い野次を飛ばす輩はまずいないでしょう」
マーシュの言うと通り、ディープソートがステージに姿を見せてから観客席が埋まりつつある。彼女の固定ファンの多さもさることながら、一見さんを逃さない人心掌握術にある。
「みんな~これからDIVEやるから見ていってね~」
計算され尽くしたウィンクは、店内のいたるところに設置されたホログラムスクリーンに流される。そして、心奪われた客がフラリとまた一人とやって来た。
「アオバにとっては完全にアウェーだ」
ステージ上に棒立ちのままアオバは苛立ちを募らせていた。
「待たせちゃってごめんね。てへ♡」
「いい加減、早く始めようぜ!」
「もう、せっかちな男はモテないんだぞ〜」
『試験を開始します』
機械的なアナウンスに従い、アオバはBCDに手を翳す。対するディープソートもチョーカーにぶら下がった宝石型のBCDに触れた。
『
データの再構築に伴い、ディープソートの尾鰭が消え去り、
ヒールでステージを打ち鳴らすと、マス目状にバタバタと裏返っていく。
あらかじめモデリング情報を用意しておけば、
今回選ばれたのは、白と黒のマスが整列したチェスボード――――。
「
乳白色の大理石で象られた女騎士が騎馬に跨る。微動だにしない姿は、芸術的な美しさを放っていた。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……
≪ホワイトナイト・ヴァルキリー≫
┣━{
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……
「このアバターが出た時、山札の上から三枚見て、
「バトル、≪ホワイトナイト・ヴァルキリー≫でアオバくんを攻撃!」
剣を掲げると、
(×◆◆◆◆◆◆)アオバ ⅤS ディープソート(◆◆◆◆◆◆◆)
「ターンエンド」
「
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……
≪トラブル・モンキー≫
┣━{
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……
≪クロカンブッシュドッグ≫
┣━{
■このアバターは出たターンに相手プレイヤーを攻撃できない。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……
「≪トラブル・モンキー≫が出た時、≪ホワイトナイト・ヴァルキリー≫に1500ダメージを与える!」
挨拶代わりにバナナ爆弾を顔面に投げつける。
「バトル! ≪クロカンブッシュドッグ≫で≪ホワイトナイト・ヴァルキリー≫を攻撃!」
爆風の中から体当たりを仕掛けられ、バランスを崩した≪ヴァルキリー≫はチェスボードに叩きつけられて無残に砕け散った。
「≪トラブル・モンキー≫でソートを攻撃」
両手をズボン突っ込み、大量のバナナを上空に放り出す。ディープソートは爆音と煙に巻き込まれる。
(◆◆◆◆◆◆)アオバ ⅤS ディープソート(◆◆◆◆◆◆×)
煤にまみれた姿に≪トラブル・モンキー≫は笑い転げた。
「ひっどーい。もっと優しくしてよ」
「DIVEに加減なんてあるかよ。ターンエンド」
「そんなこと言って良いのかな? 『
そんなこと許されるはずないとサバサキは、マーシュに視線を送る。
「何も見てないし、聞いていない」
念仏を唱えるように現実逃避していた。
「じゃあ、このまま殴り続ければ、本気を出してくれるのか?」
「もう、暴力的な男はモテないんだからね」
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