Day.18 群青

 群青。

 かつては高価な鉱物を砕いて作った色だったため、とても貴重な色だったのだという。

「ヒトミさんは群青が似合いそうだよね」

 珍しく綺麗な群青色を見せる空を見上げながら僕はなんとはなしに呟く。

「どうして?」

「群青は高価な色だから」

「別に私は高貴な人間でも、高価なものしか身につけない人間でもないよ」

 今着ている服だって‪××××のものだし、と安価で有名な服屋の名前を上げるヒトミさん。むしろ、それ着ててこんなオシャレに見えるヒトミさんが凄い。

 今日は休日。

 貴重なヒトミさんの私服姿を拝ませて貰えて僕は幸せだと思う。

「君と同じ普通の人間なのだから、そんなに緊張しないで話してくれて良いのだけれど」

「いや、だって2人きりのお出かけなんて」

 デートみたい。

 言葉は群青の空に溶けて、僕はヒトミさんの赤い顔という貴重なものを見られたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日常一抹怪異譚 べに @miraqua

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ