第29話 メイちゃんの水着ファッションショー


 そんなこんなで、メイの水着選びにやってきた俺たち。

 今度のファッション店は完全に女性向けであり、女性モノの下着なども多く取り扱っているため男性客など他には皆無で、なんだか肩身の狭い状況になってしまった。妻や娘を持つお父さんがなぜショッピングモールで寂しげに一人ベンチで座っているのか理解出来たような気がする。


 そんな俺の気持ちを知ってか知らでか、メイはテンション高く「あーこれカワイイっ!」「こっちカッコイイけどエロ~!」「この色マジいいじゃん!」とそれはもう楽しそうに目を輝かせて水着を物色していた。

 こういう売り場をじっくり見たことがなかったが、女性モノの水着ってこんなに種類があるんだなぁ。男性モノも申し訳程度に置いてあるが、メイによるとカップル需要があるらしい。なるほどな。


「おにーさんおにーさんっ、ほらどっちがいい? 着替えてくるから選んでっ」

「あ、ああ。んーと……」


 メイが両手でそれぞれ掲げた水着は色もデザインも異なっており、ちょっとセクシー系なビキニタイプと、ひらひらしたキュート系のタイプだった。


「んー……」

「どしたの? どっちも好みじゃなかったとか?」

「や、そういうわけじゃなくて。メイならどっちも似合いそうだから選べな──」


 と、ちょっと恥ずかしいことを言ってしまったかと気付いて口を止める。

 メイは俺の顔を見て何度か目をパチクリさせ、それからむふっと笑った。


「つまりどっちも見たいってことぉ~? もー仕方ないなぁ。おにーさんの期待に応えてあげるっ。ほらきてきてっ!」

「お、おいっ?」


 そのままメイに手を引かれ、試着室の前に。女性の店員さんに声かけをしてから一番端っこの部屋に入ったメイは、「じゃ待っててねっ」と水着を持って中に入り、カーテンを閉めた。


「あ、ど、どもっす」


 その店員さん(女性)と、周囲のお客さん(全員女性)たちから軽く注目を浴びていたので会釈をしておく。なんだか生温かい視線をもらっているような気がして、ムズムズとした居心地悪い恥ずかしさを全身で感じた。


 そのうちにカーテンが開き、メイがさっそく一つ目の水着を披露する。


「じゃーんどうっ? 前のお気にのヤツと同じメーカーでさ、色も似てるしカワイイしよくないよくないっ?」


 ギャルピースでそれっぽいポーズをとるメイ。

 その水着は以前自撮りや風呂のときにも見た白いビキニとよく似たタイプのもので、露出は多いがJKならこれくらい当たり前なのかもしれないし、何よりメイの活発さによく似合って様になっている。正直文句のつけどころもないくらいで、これ以上似合うのがあるのかというレベルだ。


「いいんじゃないか。やっぱメイには白が似合って──ってぇ!? ちょ、メイ! そこ! み、見えてるって!」

「へ?」


 俺の視線を追って気付いたのか、頭を横にずらしてから自身の下半身を覗き込むメイ。それから「あー」と苦笑した。


 メイの水着の下から──下着らしきものの紐がしっかり見えてしまっていた!


「男の子って水着の試着とかしないカンジ? 水着ってさ、試着するときは下着の上からしないとなんだよね。だから今日はそういうインナーショーツ履いてきてるの」

「いんなーしょーつ? あーそっか。そりゃ衛生的に考えたらそうだよな……」

「ちな、上はヌーブラだから見栄えもいいっしょ? それでど? カワイっ? あたし的には割とバッチリなんだけど!」


 試着室内で、グラビアアイドルのような胸を寄せるポーズで姿勢を下げるメイ。自然と目が胸元に向かいそうになってしまうが鋼の意志で堪える。そうかヌーブラなんてのもあるんだよな……。


「あ、ああ。いいんじゃないか? うん、いい!」

「なんかテキトーっぽいんですけど~? ちゃんと見てよもー。これだからドーテーさんはー」

「こんなとこでやめろアホ! ちゃんと見たから! マジでいいと思ったよ! もういいだろ!」


 小声で必死に詰め寄ると、メイはくすくすとおかしそうに笑った。


「はーおもしろ。じゃ次のも着るから待っててねっ」


 と、再びカーテンを閉めるメイ。一人残された俺はまた周囲の視線を感じていたたまれなくなってくる。


 ──で、続いてのフリルがついた可愛らしい水着もよく似合っていたため、正直俺には決めがたく「どっちもいいと思うんだけど」と返す他なかった。

 しかしメイ的にその答えは不服なようで、試着室から出てきた私服姿のメイは眉尻を上げる。


「んもーおにーさん優柔不断だなぁ。じゃ、他にもいろいろ試してみよっかな。おにーさんがもっとビビッとくるのがあるかもだし」

「え? その二つのどっちかにするんじゃないのか?」

「んーん? とりま試しただけで、まだまだ気になるのいっぱいあったし。店員さーん。これ、試着ありがとでしたー」


 メイが試着した水着を近くの店員さんに手渡す。店員さんは笑顔で受け取った。


「はい、じゃー第二陣いくよおにーさんっ」

「おいおい、どれだけ試着する気なんだよ?」

「んー、まあ十とか二十とか?」

「そんなに!?」

「こんくらいフツーだってー。店員さん、またあとで試着室借りますねー!」

「はい。どうぞごゆっくりお探しください。もしよろしければお着替え大変でしょうから、まとめてのご試着でも構いませんよ♪」

「えーホントですかっ? ありがとございまーす!」


 ニコニコ優しい接客の店員さんのおかげでまたテンションの上がったメイ。

 それからは本当に冗談ではなく十どころか二十の水着の試着を始め、そのたびに感想を聞かれておたおたする俺は店員さんや他のお客さんたちからくすくす笑われる存在となってしまったのであった。そろそろ勘弁してくれ!



「――おにーさんおにーさんっ、どうだった? メイちゃんの水着ファッションショー楽しめたっ?」

「いやもう一生分女の子の水着を見たような気がしてるわ」


 試着室から顔だけを出したメイがケラケラ笑い、試着した水着をまた店員さんに渡してから言う。


「じゃ、次で最後ねー。コレはおにーさん気に入るかもよ~♪」

「おお、やっと最後か……」

「店員さーん。ちょっと恥ずかしいので、カレシも一緒に中いいですかー?」

「はい、ごゆっくりどうぞ♪」

「え?」


 試着室から伸ばされたメイの手が、呆然とする俺の手を掴んだ。


「ほらおにーさん、入って入ってっ」

「は? ちょ、ま、待てってなんで俺までっ? いや靴! 脱がないとっ」


 そしてバタバタしながらなぜか俺まで試着室の中に引きずり込まれてしまった!


「おいメイ!? だからなんで俺まで──」


 と、そこで声が止まる。



「じゃーん! どうどうっ? 今流行りの金ビキニ~♪」



 メイが着ていたのは──なんと言葉通りに金色のビキニだった!

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