第28話 ハーレムデート


「いやそのっ、二人ともそれは誤解──」


 と言い訳をしかけるも、メイと風呂に入ったことは事実だしとそれ以上否定もしきれず唸るしかない俺。メイはそんな俺を見てニヤニヤしていた。無敵かコイツは!


 すると桜森さんが小さく咳払いをして、ほんのり頬を染めながら言う。


「本日のお買い物には朝比奈さんもお誘いしたかったので、こうして出会えたのは嬉しいところなのですが……その、わ、私たちは逢瀬の邪魔になってしまいますね」

「う、うんそうだよねフミちゃん。せっかく二人きりの、ラ、ラブラブなっ、デートの時間を邪魔しちゃったら悪いよねっ」

「んーん、全然ヘーキだよ! せっかく会えたんだし少し一緒に遊ばないっ? ほら夏休み一緒に遊ぶって約束だったしさ! おにーさん、いーい?」


 と確認をしてくるメイ。このとんとん拍子の展開の速さ、さすがの陽キャぶりである。こうなると俺はもう付き合うのみだ。


「ああ、俺は問題ないけど」

「だって! フミっちとうとうとは急ぎの予定とかあった?」

「いえ、二人で夏服を見て回ろうという程度で、特には」

「そっかそっか! あ、それじゃフミっちとうとうとも一緒におにーさんの服見てくれない? あたし一人じゃあたしの趣味になっちゃいそだからさー」

「私は構いませんが……よろしいのですか?」

「わ、わたしもいいんだけどっ、だ、大丈夫なのかな?」


 遠慮がちにこちらの様子をうかがいながら確認してくる二人。なんかそれだけで良い子たちなんだろうなとわかった。


 メイは俺の腕を掴んだままキャピキャピとはしゃぐ。


「おにーさんもいいって言ってるからぜんぜんオケっ! おにーさん、朝っぱらからカワイイJK三人とハーレムデートなんてやっぱツイてるじゃ~ん♪ さすが占い第一位!」

「ハ、ハーレムデートだぁ?」

「え? これはデートになる……のですか? わ、私、男性の方とデートなど初めてで……お兄様、粗相してしまったらすみません」

「え? い、いやそんな」

「わ、わ、わたしもっ……! あのっ、お、お兄さんっ、ふつつかものですがよろしくお願いしますっ!」

「いやいや二人とも、そんな仰々しくならなくても!」

「アハハハ! あっ、それからあとでスマホ買い直すからさ、そしたら二人の連絡先教えてね。古いデータ移せないかもだからさー。ほらおにーさん行こ行こ~!」

「まぁ……なんと手慣れた様子の腕組みなのでしょう……」

「ほ、本当の恋人さんみたいっ……!」


 俺の腕を引っ張るメイを見て盛り上がる桜森さんと善知鳥さん。

 なんでこうなったのかさっぱりわからんが……ま、せっかく会った友達とすぐに解散じゃ寂しいだろうしな。

 とまぁそんな思いで、ひとまず付き合うことにする俺だった。



 ──四人でまず向かったのは、主に女性物の衣類を扱う有名ブランドのメンズコーナー。品数はそれほど多くないが、むしろそのおかげで商品が選びやすいという利点もあった。


「えっおにーさんそのシャツ似合うじゃん! やっぱあたしセンスあるくなーい?」

「お兄様は背丈が高くいらっしゃいますから、こういったスラリとしたお召し物がお似合いになりますね」

「お兄さん、そ、その色すごく素敵ですっ。うちの弟より、ずっとかっこいいですっ!」

「あはは、そ、そうかな。ありがとう」


 メイ、桜森さん、善知鳥さんに囲まれながら、あれやこれやと服を渡されて試着してはキャッキャとはしゃがれる。

 着せ替え人形のようでちょっと恥ずかしかったが、それでも普段自分では選ばないだろう服やコーディネートをしてもらって楽しくもあった。実際に気に入った物も多かったのだが、予算にも限界があるので結局ワンコーデ分だけ買うことにした。JKたちに感謝だな。



 ──で、その後はメイのスマホを買うため家電量販店へ。

 特に悩むこともなく最新型のMiPhoneを購入することにしたメイ。メイいわくJKの間ではスマホ=コレ一択らしく、桜森さんと善知鳥さんも同型機種なのだとか。さすがの人気ぶりだ。

 またショップ店員さんに相談してみたところ、クラウドサービスのおかげで簡単にデータを復元することができて、メイのスマホはあっという間に元の利便性を取り戻したのであった。


 喜ぶメイはスマホを操作しながら言う。


「あーホントよかった~これで一安心! そだっ、せっかくだしフミっちとうとうともおにーさんと連絡先交換しといたら? これからもみんなで遊ぶ機会あるかもじゃん」

「え? ですが……よ、よろしいのですか?」

「でもでもっ、お、お兄さんは迷惑なんじゃ……?」

「いや迷惑なんてことはないよ。二人がいいなら」


 というわけで、その場で桜森さんと善知鳥さんとも連絡先を交換。メイがすぐに四人専用のグループメッセージまで用意してくれて、全員でそれぞれ一言ずつ挨拶のメッセージを残した。



 ──それからは四人でフードコートに向かい、休憩がてらの昼食をとった。

 JK三人のキャッキャした場にまじっているのはちょっと場違いというか、俺だけ浮いているような気もしたんだが、桜森さんと善知鳥さんのおかげで学校でのメイがどういう感じなのかとかも教えてもらえて新鮮な楽しさがあった。また、小さな頃のメイは意外と人見知りだったらしくて、その話のときに「もーハズいからやめー!」と全力で照れていたメイには三人で笑ってしまった。お前にも無敵じゃない時期があったんだなメイ……!



 そんなこんなで、四人での時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。


「それでは湊お兄様、またご機会がありましたら是非」

「湊お兄さん、きょ、今日は楽しかったです! ありがとうございましたっ」


 昼食後、桜森さんと善知鳥さんとは別れることになった。

 どうやら二人とも俺とメイに気を遣ってくれたみたいなんだが、まぁ、ずっと俺と一緒に遊ぶことになったらさらに気を遣わせちゃうしな。かと言って、俺だけが抜けて三人でどうぞ──ということになってもそれはそれで気を遣わせるだろう。


「こっちこそ、服を選んでくれてありがとう。なんか急にこんな風に付き合わせちゃってごめんね」

「いえいえ、とても有意義な時間を過ごせました。それでは朝比奈さんも。これで失礼しますね」

「メイちゃん、またねっ。あとで連絡するねっ」

「うん! 二人ともありがとね! バイバーイ!」


 こうして二人とは別行動となり、またメイと二人の時間に戻った。

 メイはうりうりと肘で俺を突いてくる。


「おにーさん、二人から『湊』って名前呼ばれてデレデレしてな~い?」

「はぁ? し、してないっての。ていうか、メイの影響で普通に二人からもお兄さん呼びされてる方が恥ずかしいんだが」

「アハハ! まー苗字とか名前でさん付けするより呼びやすいしねっ。じゃ行こっかおにーさん」


 メイは再び俺の腕に抱きつくように絡みつき、こちらを見上げて嬉しそうに笑う。


「またメイちゃんを独り占めできるねっ。うれしっ?」

「ハイハイウレシイッス」

「ぶふっ。ヘーキなフリして照れてるヤツ出た! じゃ次は予定どーりあたしの番ね? 新作水着をゲットしにいこー!」

「マジで行くのかぁ……てかさ、水着こそ桜森さんと善知鳥さんに見てもらった方がよかったんじゃないのか?」

「んもーおにーさんわかってないなー? おにーさんに選んでもらうからイミあるんじゃん? てゆーか大チャンスなんだけど気付いてないワケ?」

「何がチャンスなんだよ?」

「おにーさんが好きに選べちゃうんだよ? ビキニでもワンピでもオフショでも、おにーさんの好みの水着をなんでもメイちゃんに着せられる大チャーンス!」

「な、なんでも……!?」

「あーちょっと行く気出た? 特別に、ちょっとエッチなのでもいーよ♪」


 ひそひそと耳元でささやかれ、思わずごくっと生唾を飲む俺。


「ぷ、アハハハハ! またそのムズムズ顔ー! どんだけ期待してるのおにーさんっ」

「き、期待なんてしてないっての! ほらもう行くぞ! てかマジでわからないからメイの方こそ期待するなよな! メイのオススメの中から選ぶとかならまだいいけどさ」

「あーじゃそういう感じでいこっか? 楽しみだねー『湊おにーさん』♪」


 初めてメイからも名前を呼ばれてついドキッとしてしまったが、顔に出ないよう平静を努める俺なのだった。

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