第24話 今、顔見ないで!



「こ、公爵って、公爵!?」

「はい。公爵です」


 淡々と答えるミゲルさん。の頬がすこし赤い。視線はフレデリカの元へむいていて、その視線を追ってフレデリカを見れば、フレデリカも頬を染めている。


「つまり、2人が婚約?」


 思わず指をさすあたしに、フレデリカが楽しそうに笑う。


「そうよ」

「そうです」

「あ、そう…………」


 って、あたしの勘違いかい!!!!!!

 は、恥ずかしい!


 あたしはついに真っ赤になってしまった。顔が熱いのがわかる。自覚あるくらい赤い。絶対。恥ずかしい。だって、フレデリカとアルクスが婚約するんだとばかり思って、殿下とお幸せに的なことを言ってしまった。しかも関係者全員の前で。


 あれ、でも。


「アルの婚約は?」

「それについては、弁解させてほしい」


 思ったより近距離にいたらしい。真後ろからの声に驚いて肩が跳ねる。


「まず、婚約の話は確かにあった。でもお断りしたよ。と言うのも、今回2人の婚約がきまったことで、王家派閥は今盤石と言えるところに来ている。今は、それで十分と言うのが、王の意見だ。これ以上の地盤固めはいらない」

「はぁ」


 曖昧にしか返事ができない。というかいまだに振り返れない。

 ちょっとフレデリカ、ニヤニヤしないで。


「加えて、イーサン・ジェイコブ……フレデリカの元の婚約者だが、彼はもともと貴族派で、王家派と対立していた。フレデリカとの婚約は繋ぎの意味もあったのだが、あちらが騒動を起こしたことで、勢力を失っている。彼らと繋ぎを得るメリットは……そうだな、財力くらいなものだが、そちらはまぁ、こないだの件を母上がお怒りでな……」


「え、王后さま?」


「うん。それで、イーサンにも、公爵にもすこし痛い目を見てもらおうと思って。そういう諸々の事情から婚約しないことになったんだ」

「痛い目?」

「…………私の婚約相手、イーサンの妹だったんだよ」

「は!?」


 あたしは思わず振り返ってアルクスを見た。

 と思ったら、すごい優しい顔をしてあたしを見ていて……。


「まった! ちょっとまった! 今あたしの顔みちゃだめ!」

「え!? なんで!?」


 ばっと音がしそうな勢いであたしはしゃがみ込む。膝の間に顔を埋めて、あたしはうーっと唸った。だって、今絶対すごい顔してるっ。すごい赤い顔してます!

 ああ、もうっ。じゃあ、あたし1人で突っ走って、1人で悶々として、1人で勘違いして、逃走劇を繰り広げたわけだ。

 さっとそばにフレデリカがしゃがみ込む気配がして。


「よかったね」


 なんてこっそり言ってくるものだから、さらにあたしは赤くなってしまった。


「それで、レナ」


 後ろからアルクスがあたしの肩に手を置いて話しかけてくる。


「本気にしてくれたんだって?」

「はひ?」

「いやぁ、俺の一世一代の告白から数日、よく逃げてくれたよなぁ。こっちはヤキモキしたよ。だって、まさかこんなに避けられるとは思わないだろう?」

「あら、殿下とうとう告白に成功されたんですか? 聞いてませんわ。レナ」

「言ってなかったのか。まったくこういうところは口が硬くて、そんなところもかわいいよ」

「やーめーてー」


 これ以上あたしを照れさせないで!


 

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