第26話 深淵へと向かうもの
エルスたちが〝
平たい円盤状の船体に、半円のドームを
その船内。机や作業台、本棚やガラス製のカプセルが設置された一室にて。ボルモンク
「ふぅむ。まだ演算処理能力に不足がありますね。さらに
ボルモンクが神経質そうに、
「
「ほう、
「どうするのん? 海底の
ゼニファーの言葉を受け、ボルモンクが
「
「その
「厳重に
「それよりも――。よくも、〝妙なもの〟を持ち込んでくれましたね。この
「あらん? そうだったかしらん? だって、勝手に入ってきちゃったんだもの」
ゼニファーは
「それに、アイエルだって。オトコ
「あの魔人族が手に入ったのは
「はぁい。それじゃ、そろそろマーカスちゃんに〝エサ〟でもあげようかしらん」
教師の小言から逃れるかのように、ゼニファーがその場で
*
浮上船クライテリオンの下層区画。その片隅にある小部屋にて。ひとり
「俺っちは……。いったいナニをヤッテンダ……」
「フゥ……。少し風に当たってクルカ。外に出られりゃイイガ」
ゲルセイルは軽く身だしなみを整え、スライド扉から廊下へと出る。そこには左右に向かって薄暗い通路が伸びており、時おり獣のような
「なにが〝新しい仲間〟ダヨ。牢屋じゃネェカ。アイエルは、どこダ?」
迫る金属音から
「これぞ、
自身に流れる〝魔〟の血の影響か、思わずゲルセイルが舌なめずりをする。通路を進みゆく途中、彼は何度も、全身を黒い鎧で包んだ〝奇妙な衛兵〟とすれ違う。
「警備。警戒。警備。警戒。警備。警戒。警備……」
「オイ、オマエラ。さっきからナニ言ってんダヨ?」
「異常物品を発見。収容ステータス確認。……コンテインド。問題なし」
ゲルセイルに話しかけられた衛兵が彼の方へと頭部を回し、
「ナンダヨ、アイツラ。なんとなく〝
「んあ? 誰かインノカ? アイエルじゃなさそうダガ」
独り言を呟きながら、ゲルセイルが小走りで駆ける。やがて、通路は突き当たりとなり、進行方向左手側の鉄格子の中で、水色の髪をした少女の姿を発見した。
「ひっ!? 来るな、
「俺っちは、ゲルセイル。見てのとおり冒険者――いや、もう
「なんだよ、あんたも捕まったのか? あたしはイムニカだ。……ねぇ、ゲルセイル。あたしも
そう言ってイムニカが笑顔を見せるものの、すぐにゲルセイルは左右に首を振る。そして、自身の首と両腕に取り付けられた黒い〝
「
「それ、あたしにもついてる……。うーん。いまは、おとなしくするしかないか」
右手の親指で自身の首元を指しながら、イムニカが大きく
「いまは、ッテ。まさか逃げる気か? ヤメといた方がイイゼ」
「やだよ、絶対に
「ママ? エルス? それジャア、オマエが〝例の人質〟ってヤツカ。たしカニ、オマエを助けるって
自身の
「ほんとっ!? ねぇ、いつ!? いつ助けにくる!?」
「サァナ。今ごろ作戦会議してんじゃネェカ? そんなコト言ってた気がスルゼ」
「ううっ……。そっか……。お願い、早く助けにきて……」
冷たい金属床に
「俺っちは……。いったい、ナニモノなんだろウナ」
不気味な
*
港町カルビヨン。渚と閑古鳥亭にて。食事を終えたエルスたちは食後の
「まッ、そうは言っても、いまはみんなに任せるしかねェか」
「でも、決めておいて正解だったと思う。それで、アリサちゃん――」
ティアナの言葉につられるように、エルスとミーファもアリサへと視線を向ける。店には相変わらず客の姿はなく、エルスたちの貸切状態となっている。
「うん? あっ、アイエルさんのこと?」
「そうなのだ! いったい、アリサは〝なに〟を見たのだ?」
「えっと、ほんとに大したことじゃないんだけど」
アリサは〝海賊島〟にてアイエルの
「神聖文字か。オーウェルさんや、ディークスの
「なのかなぁ? たしか、こんな感じのだった」
そう言いながら、アリサが宙に三回、指を走らせてみせる。
「それは、たぶん
「別の世界から来たみてェだしなぁ。いろいろ違ってても無理ねェさ」
「そういえば。なんで、みんな〝おまじない〟してるんだろ?」
アリサからの問いに、三人は
「なんッか、俺も〝引っかかってること〟があンだよなぁ。うーん……」
「この件が落ち着いたら、オーウェルさんとも話してみましょっか」
「だな……。まずは〝秘宝〟を手に入れて、イムニカさんを助けるぜッ!」
自らを
着実に動きはじめた世界において、再び姿を見せはじめた転世者たち。――だが、それらの意味するところを知る者は、まだこの場にはいなかった。
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