第22話 託されし想い

「写真? アンタ……幼馴染なんだから、それくらい持ってないの?」


 しかし、理解を示すよりも先に、そんな疑問が飛んでくる。ジト目でこちらを見遣る火口からな。


「自慢じゃないが持ってない。あいつと話したのだって、半年前の『七不思議狩り』ん時以来だったからな」

「え? あの時は結局、会えずじまいだったような……?」


 そう返すなり、水戸からもそのような疑問が。


「あぁ、実はこいつ……星羅せいらちゃんを止める為に未来から来た、もう一人のカズでね。先週までこの学校にいたあいつとは別なんだよ。へっへへ! いっぺん言ってみたかったんだよな~、こういうセリフ?」


 解説ご苦労、鷹志たかし。楽しそうで何よりだよ。火口も水戸も十二分に驚かせられて、満足げな笑みを浮かべていた。


「ただ者じゃないとは思ってたけど、ホントぶっ飛んでるわね。アンタ。でも……ありがと。星羅の為に頑張ってくれてさ?」

「ボクからもお礼……というか、謝らせて? 半年間も何も無かったから、ボク……正直、『もう無理なんだ』って期待するのやめちゃってた。でも、そんな中でも数原くんは一人で必死に頑張ってたんだね? ごめんなさい……。そうとは知らず、何もしてあげられなくて……」


 すると火口が、水戸が、二人して頭を下げてきた。オレには――「その意味がよく分からなかった。別に謝ることなんざ何もないのに、オレが勝手にやってるだけなのに、二人が頭を下げるその意味が。まあ、恐らくオレのことが好きなんだろう。仕方ない。二人纏めて今夜抱いて――」


「おい、ボケ。勝手にオレの心ん中を代弁すんな」


 と、危うく乗っ取られかけてたオレは、隣にいた鷹志おバカの頭をペチコンと叩く。油断も隙もないな、こいつ……


「え? でも、だいたい合ってただろ?」

「半分しか合ってないわアホ」


 それでこのやり取りは終わり。早々に流した。つもりだったのだが……


「えっ⁉ ア、アンタ……アタシらを抱くつもりなの……⁉」

「数原くんっ⁉ いくら怒ってるからってそれは……!」


 火口おバカ水戸おバカがそれを許さない。顔を真っ赤にしてるのは、果たして怒りか恥じらいか。


「合ってんのは前半の方だ、前半の方……ッ! もういいからさっさと写真寄こせよ!」

「アタシたちの……?」

「星羅のだッ! せ・い・ら・の! いい加減、殴るぞ……!」


 ということで、紆余曲折(オレに対しての謂れのないドン引き行為)ありながらもオレは、なんとか星羅の写真データをゲット。携帯に送ってもらった。


 目的も達成したゆえ、もう用はない……とはいかない。どうやら火口はその先も気になるようで……


「それで……いつ行くのよ? 星羅を追いかけにさ?」


 踵を返しつつあったオレの袖を掴み、上目遣いを交えて問うてきた。


「さあな。また半年後かそれとも一年後か……。とにかくやれることは全部やるつもりだ」


 すると、それに続いて今度は水戸が、


「でも、写真があるとしても、向こうは別世界なんだよね? そもそも言葉が通じなかったりするんじゃ……」


 もう片方の袖を掴んでくる。……なんだ、それ? 流行ってんのか?


「心配しなさんなお二人さん。人間にはよ? ジェスチャーっつー、最強の意思疎通手段があるんだ。そいつがある限り、人間の間に壁なんて存在しねえのよ」


 実にいいセリフだが鷹志。お前まで袖を掴むのはなんでなんだ? 関係なくないか? 絶対。


「だとしてもよくそれで行こうって気になるわよね……。いくら友達の為とはいえ、アタシなら躊躇しちゃうかも……」


 ぐい~ぃっ……


「ボクも同じことやれって言われても無理だなぁ……。だからこそ、一人で行くというのは、あまり賛成できないかも……?」


 ぐい~ぃっ……


「大丈夫だって。こいつはそういう感覚ぶっ壊れてるから。ほとんど悪い方にしか働かないが、こういう緊急時は驚くほど使いもんになる。向こうでだって、きっと上手くやるさ」


 ぐい~ぃっ……


 もうこれ、袖取れるんじゃないか?



「よかったろ? 話、しといてさ?」


 朝のSHRが差し迫ってた為、なんとか三人の魔の手から逃れたオレは、教室へと戻る道中、肘で小突いてきた鷹志にそう耳打ちされる。


 火口と水戸。前を歩く二人の安堵した背中、横顔を見れば、その意味は自然と理解することができるだろう。オレが一人で抱えてたばっかりに、不安にさせちまってたみたいだが……今はだいぶマシになったか。


「そうかもな」


 なのでオレは素直にそう返しておく。こればっかりは鷹志に感謝だ。


「そうだろうそうだろう。ま、本番はこっからだろうからよ? お前は自分のやるべきことに集中しろや。で、星羅ちゃんのこと探し出して、ちゃーんと連れ帰ってこい。それまでの間、こっちのことは俺に任せとけ」


 頼りになるのは結構なことだが、こっちの心配はそれほどしていない。


 けど――


「フッ……あんまり羽目外しすぎんなよ?」


 『熱』とは違う何か熱いものを感じ、気付けばオレは口元を緩めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る