第18話 ファッションショー

阿久津と美玲さんが……

気持ちを確かめ合ったその

数日後に、美玲さんのマネージャーから


俺の元に連絡が……入った。


『ひろし君、ありがとう。

美玲が……近頃、やる気が

出てきてね!

ひろし君美玲に何かしたの?』



『…………いえ。』



『阿久津くんに聞いても、何も

言わないんだよね?』


美玲さんは、あれから学校へ

歌手活動へと、阿久津と行動を共にして、忙しく動いていた。


そんな時に、美玲の隣で

俺がエスコートする

ファッションショーの話が舞い込んできた。


俺が、返答に困っていると

阿久津には聞いている。との事

だった……。


美玲さんが真ん中へ

俺と阿久津が……両脇を囲む

形で、ランウェイを歩くだけ

だから。緊張しないで。


と美玲さんのマネージャーは

話を終えた。



近頃の美玲さんは、とても美しかった。美しさに輪をかけ

とても幸せそうに歌っていると


海外でも、日本でも評判は上々

だった……。



美玲さんは、よく阿久津と

デートを重ねていた。阿久津は

阿久津で、今までの感情を


取り戻すかの様に……


美玲さんを大切にしていた。



阿久津は、俺には話さなかったが

とても、充実しているのが

阿久津の雰囲気で分かる。



阿久津は、俺に遠慮して

美玲さんの話は出さない。それが

返って俺にとっては

でしかなかった。



3人揃ってのファッションショー

の会場は、ファッションの

聖地とも、言われる場所だった。



美玲さんは

ファッションショーに阿久津と

堂々と歩ける事に、喜びを

感じていたのだった。



ファッションショーは1ヶ月後

に決まっている。

それまでに、ウォーキングの

練習や、衣装合わせ等で日々が

忙しく追われていた。



ただ一つ。阿久津が……少し

だけ、浮かない顔をたまに見せていた。俺は……美玲さんと


痴話げんかか?位にしか考えて

無かった。




衣装合わせの時に、美玲さんは

ウエディングドレスや

カクテルドレスを何着か着るのだが。


阿久津は、そのドレス姿を

見る度に美玲さんを褒めていた。


当てられっぱなしの俺は……

少しづつ、美玲さんへの気持ちに


終止符を打つと考え始めていた。





ショーが近づくと、阿久津の

表情が……さらに曇っていた。


俺は……さすがに不審に思い

理由を聞くが。



阿久津は、

と笑っていた。



少しの疑問と、緊張感、

美玲さんとは最初で最後の

ランウェイだな、と俺は考えていた。




いよいよ、ファッションショー

の当日になった。


阿久津は、いつもと様子が……

あからさまに違う。

顔色も悪い。理由をまた俺は

休憩時間に、聞いた。



阿久津は、意を決した様に……

俺に話し始めた。




その内容とは……?


阿久津の過激ファンの一部が……

美玲さんに対して


かなりの嫉妬心を抱いており、

阿久津宛に、ファッションショー

が近づくにつれ、


脅迫内容の手紙やネットでの

書き込みが……ものすごく酷く

なっていて、



美玲が……巻き添えにならない

様に…気を張ってる日々だった。



と……俺に初めてうち明けた。



俺は『俺が体張って、守るから。

安心しろよ!!!』


と伝えると、阿久津は笑顔を

浮かべては



と申し訳なさそうに話していた。




この会話が……最後になろう

とは……この時の俺は、想像も

しなかった。





ファッションショーが

始まると。。。厳重警戒の元


美玲さんと、俺らの出番が

やって来た。




美玲さんは、ウエディングドレスを着て、両脇に俺達が……


美玲さんをエスコートする。




観客はとても、大盛り上がりだった。俺は、ステージに上がる

のが、こんなに凄い事だった

とは。鳥肌が……立ちっぱなし

だった……。



美玲さんが……手に持っている

ブーケを客席へと、投げた。


と、その時……観客が

湧き上がる。盛大な拍手も、


ものすごかった。




何かが……倒れた音が聞こえた。





俺は……訳が分からずに

阿久津の方を見ると、、、!





阿久津は、かがんでいた。

腹を押さえている。どうした?

と思った次の瞬間、



阿久津の腹から、大量の血が

流れていた。



会場中は、一瞬にしてパニック

になり、逃げまどう客で


大騒ぎと、なった。




阿久津は、白いタキシードを

刺された傷口からの大量出血で


紅く染めていた。



阿久津の顔は、痛みで歪み

その場で、倒れてしまった!



俺は……何が?

何が?起きたんだ?



阿久津は、ステージ上で

苦しみ続けていた。







美玲さんが………泣きながら

悲鳴を上げていた。







阿久津は…………過激ファンに


腹を思い切り刺されて、

出血多量で、16歳という若さで





この世を……去ったのだった。




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