247.エルフ以外の他種族っているんだなあ
夜も遅くなってきた時間。
ソアラに二人乗りをしているあたし達は彼女を駆って灯りの見える町へと先を急ぐ。すると手綱を握っているレスバがほろりと涙を流しながら口を開いた。
【久しぶりにベッドで眠れますねえ……】
「いや、どうかしら。さすがにすぐってわけにはいかないわ」
【出鼻をくじくのやめてくださいよ……】
レスバの言葉に困った感じで返すと、冷や汗をかいてから一瞬、首だけ振り返る。だけどあたし達には致命的な点があるので仕方がない。
それは――
「あんたねえ。あたし達にはお金がないことを忘れてない? ソアラの近くに船に置いていた食料が少しあったから良かったものの、お金はリクが持ったままなんだからね?」
【確かに……!? ま、まあ、わたし達の力があればギルドで稼げばいいじゃないですか】
「あー、それはアリね」
今までは目的の為に旅をしてきたからギルドの依頼というのは受けたことが無いのは承知のとおり。だから受け方もよくわからないのよね。
まあ、大きい町なら説明をしてくれると思うし、カードがあれば仕事はあるからそこは心配していない。
どちらかと言えば問題はレスバとソアラ以外の人間がどこに居るか分からないのが問題ね。
「スマホは……ダメか」
【連絡はつきませんか】
何度か三人に連絡を取ったけど、まったく繋がる気配がない。範囲はどの程度か分からないけど、ロカリスとエラトリアの距離はある程度できていたから国をまたいでくらいならなんとかなると思う。
それでも繋がらないとなると、かなり遠いかスマホが壊れたかになるのよね……
【死んだりはしていないと思いますから、気を落とさずに出来ることをやっていきましょう。まずは地図で現在位置の把握が急務ですね】
「レスバ……うん、そうね! さて、あの町はどうかしらね」
レスバは割と魔族連中はしぶといとか、勇者であるリクや風太、水樹が死ぬなんてことはないと常々言ってくれていた。お調子者ではあるけど、彼女なりに励ましてくれているようでちょっと嬉しい。
むしろこの性格だからこそ暗くならずにすんでいるところはあるしね。
「というかこの地域、寒いわね」
【北の方、とかでしょうか。だいたい寒い地域というのは北なんですが】
「雪でも降りそうな感じがあるわね」
そんな感じで話をしているとやがて町が近づいてきて、この何日間か魔物を狩って食べていたワイルドな生活が終わることを告げる。魔法が使えることがこれほど有利だと思ったことは今までで初めてだったわ。
「む、こんな夜更けに旅人だと?」
【こんばんはー!】
「ちょっと道に迷っちゃって。入れて貰えます……って、背が低い!?」
「うるさっ!? ええい、静かにせんか。寝ている者もいるんだからな。ギルドカードは?」
「あ、あたしだけ持っているけどそれでいい?」
動揺を隠しながら言われた通り、胸に下がっているギルドカードを見せる。灯りを近づけて確認すると、身長の低いおじさんは短く感嘆の声を上げた。
「……ほう、Bランクとは若いのにやるじゃないか」
「ありがと♪ で、入ってもいいかしら?」
「ああ。身元がハッキリしているしな。宿はここから真っすぐ歩いて建物が見えたらすぐ右のでかいのがそうだ」
【これはご丁寧にありがとうございます。では行きますよソアラ】
レスバがソアラの手綱を動かして前へ進む。よく見れば近くにも同じように背の低いおじさんが居た。門番だからそりゃいっぱいいるかと思う。それと同時に疑問が浮かび、レスバに小声で話しかけた。
「……なんか似たような容姿の人ばっかりだったわね。この町の流行りかしら? というか小さくない?」
【ああ、カナは知らないんでしたっけ? 彼等はドワーフですよ。成人でも身長は人間の胸くらいまでしか伸びません。ただ、手先は器用ですし力も人間の倍かそれ以上ありますね】
「ああ!」
レスバにレクチャーを受けてあたしはポンと手を打って納得する。ゲームとかで出てくるエルフとかそういう系の種族だったわね確か。だいたい特徴も同じみたい。
「なるほどね。ということはここはドワーフの国ってところかしら?」
【恐らく。前の国々ではエルフしか見かけなかったので益々この土地が飛ばされる前との位置関係が気になりますね】
「場合によっちゃあんたが飛んでグランシア神聖国に行ってもらえると助かるかなあ。ソアラが居るから一緒には行けないし」
【そうなんですよね……。あ、ソアラがお荷物というわけじゃありませんよ?】
「うんうん」
あたし達が弁明すると、ソアラは『分かっています』といった感じで鼻を鳴らす。そこでふとあたしは頭に浮かんだことを口にする。
「転移魔法自体、物凄いことだけど、もしかして渡り歩く者って奴は狙って飛ばしたとかあるかしら? 事実として『なにかあれば飛んで逃げる』って選択肢が奪われているもんね」
【確かに……でも、それなら海に……いえ、それだとメルルーサ様が関与すれば助かりますか】
なんだかんだと町についてから考える余裕が出来た気がする。魔族もある程度味方になっていたから出来ることは多くなっていた。
そこでこの大規模転移魔法。油断が無かったかと言われれば少なくともあたしは油断していたと思う。
ひとまず推測は置いて、あたしは見えて来た宿に目を向ける。
「さて、少しだけお買い物のおつりを持っているけど……足りるかしら」
【どれくらいあるんです?】
「いち、に……銀貨七枚ね」
【ダメそう……】
あたしもそう思う……
しかしギルドに行っても依頼は無いし、これで何とかなるのを期待するしかない!
とりあえずソアラはあたしが見て、その間にレスバが受付に話を聞きに行ってくれた。程なくして待っていると――
【ぐっ!】
「やった♪」
――どうやら銀貨七枚でなんとかなったようだ。
厩舎も使わせてもらえ、ソアラを休ませてから宿に入ると、やっぱり小さいドワーフの女性が気さくに話しかけてきた。
「こんな時間に女の子二人とは驚いたねえ。しかも人間とは! 銀貨七枚だと一部屋にベッド一つになるけど、おまけでパンとスープはつけてあげるよ」
「ありがとうございます!」
【後でソアラにも最後の食料を上げに行きましょう!】
あたし達はハイタッチをしながら女将さんにお礼を言う。明日は金策を考えるとして、今日はゆっくり休ませてもらおうっと。
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