第361話「先生と過ごした3年間」


岩船先生が教師を辞めた理由。


それは、持病が原因だった。


そう語るのは、岩船先生の従兄弟の飯田友奈。


場所は校門前から村上家に移る。


4畳ほどの狭い自室に、蒼と友奈を含め3人がいる。


さすがに窮屈さを感じるこの空間には、それが気にならないほどの重圧な空気が立ち込めていた。



「教師を辞めて、だけど友くんには勉強を教えていたじゃない?」


「そうですね。受験でお世話になりました」


「だから、最後の教え子」


「なるほど」



と、基本は友奈と友彦の会話。


蒼はお茶をすすりながら、黙って二人の会話を聞いている。



「本当は卒業まで見届けたかったみたいだけど、残念ながら一歩足りなかったって感じかな」


「そう・・・でしたね」



出てきそうな涙を必死に抑える。


悲しいというか、悔しいというか。


何とも言えない感情だ。



「でも、友くんが合格したってことは、しっかり佳奈美ちゃんに伝えてあるよ」


「あ、はい・・・」


「それが聞けただけ、佳奈美ちゃんも幸せだったはずだよ」


「そんなものですかね」


「佳奈美ちゃんにとって、君は特別な存在だったからね」


「特別な・・・存在・・・?」


「そそ。友くんのアタック次第では、佳奈美ちゃんを惚れさせることもできたかもよ?」



そんなことを言うと、蒼が友奈の方を睨みつける。



「あはは、冗談冗談」



そう茶化す友奈。


今まで、岩船先生との関係は教師と生徒。


そう思ってきた。


いや、そう思い込むように自分を押し込んでいた。


何となく特別な関係だったらいいなって、そう思うことも多々あった。


だけど、そう思っていたのは岩船先生も同じだった。



「・・・そうだったんですね・・・」



こらえていたものが、溢れ出る。


自然と零れる涙は、頬を伝って落ちてゆく。


そんな友彦の姿を、友奈も蒼も見守っていた。


先生と過ごした高校3年間という青春は、多分、この先の人生で忘れられない思い出になる。



「先生、ありがと」



幸せと呼べるかは分からない。


だけど、これからも懸命に生きていこうと思う。



END

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先生と過ごした3年間 有栖川 天子 @yozakurareise

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