エピローグ

簡単なあらすじ『やっぱり新たなスタートは皆で一緒にが良いですね』




地上が月明かりに照らされる頃。

俺の昇格を祝うため、皆が我が家に集まり始めた。


「お邪魔するわよ。あら、こんばんはおチビちゃん……ん?何か目が赤いわよ?大丈夫?」


予定時刻よりも早くやって来たのはジェリアだった。


「あれ?この子……誰かに泣かされたのかな?

だとしたら、きっと犯人はクボタさんだ」


次に現れたのはロフターと、そして執事のトーバスさんだった。


第一声で既に失礼……流石、生意気な事に定評のある小僧である。


ちなみに、他の皆も俺がアルワヒネを泣かしたと思っていたらしく(まあそうだと言えばそうなのだが……でも違うじゃん?)、身の潔白を証明するのにはなかなか時間が掛かった。


まあそのようなワケで……この時の俺は大分疲れた表情をしていたと思う。


それはともかくとして。

そのまた次にナブスターさんがやって来た。


彼の姿を見たコルリス、ジェリア、ロフターは喜び、また彼を質問攻めにしている。


流石Eランクだ。

というか、今は俺もそうなんだけどな……


「クボタ!!遅くなってすまないな!!」


「お、お邪魔しま〜す……」


最後に家を訪れたのはサイロ君とサチエだ。

(ちなみに……サンディさんは友達というワケでも無いので呼ぶかどうか迷ったが、そもそも何かの会合?があって来れないそうだったので今回は欠席である)


彼女……じゃなかった。彼等は道中にて偶然出会ったらしく、別に連れ立って来たワケでは無いのだと言う。


まあ、そうだろうとは思っていたのだけれども。

と言うか……サイロ君が先程から照れたような表情ばかりしているのが気になる。


……ああ。〝彼〟を〝彼女〟だと思っているのだな。


それを教えたら顔を真っ赤にして今の言動を恥ずかしがる事だろう……が、『何となく』という理由で黙っている事にした。


そうして全員が揃い、漸く宴が始まる。

の前に、俺は昼間の練習で疲れたらしく、厩舎で寝ている魔物達を呼びに向かった。


……それに何故かアルワヒネがついて来た。

彼女は腫れぼったい目でずっと俺を見ている。


何か言いたいのだろうか?

俺は彼女の口元に耳を寄せた。


すると。


『そう言えばなんだけど……

説教された理由は分かったけど、〝された事自体〟はクボタのせいだよね?』


とまあそのよう事を、彼女は今更蒸し返してくるのであった。


それは終わった事だと言うのに……


「ええと、それはまあそうかもだけど……


何て言うか……

でもほら、あれでコルリスの気持ちが分かって良かっただろ?」


と、我ながら苦しい言い訳をした所。

彼女は顔を少し赤くして一度頷いた。


良かった。誤魔化せて……

とか思っていると魔物達が自ずから外に出て来るのが見えた。


恐らく食事の、それも普段よりも幾分か豪華な匂いに誘われたのだろう。実に欲望に忠実な家族達だ。俺は笑った。


「むむむ」


〝今僕達の事ちょっとバカにしたでしょ?〟


それにルーとエリマが反応する。

彼等にはそんな事は無いとだけ言っておいた。


そして気が付けば、プチ男とケロ太がいつの間にか俺の両肩に装備されていた……そんなにも居心地が良いのだろうか?そこは。


「クボタさ〜ん!!

何やってるんですかぁ〜?もう始めますよ〜」


コルリスの声が聞こえる。

ああ、そう言えばコイツらを呼びに来たんだったな。


では腹も減ったしさっさと行くとしよう。

俺は魔物達を連れて家に戻った……


その時の夜空は、何だかいつもよりも明るく輝いて見えるような気がした。


いや……皆で困難を乗り越え、こうして新たな出発点に立つ事が出来たからこそ、そう見えるのかもしれないな。




「…………良いねぇ、これが魔物使いの家族団欒ってヤツかい」


中空に漂い、赤く光る小さな球体。

どうやらクボタの感じたものは、気のせいでは無かったようだ。




二章 〜下級魔物使い〜 終わり

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