第27話 怒り?
ブリヤン様から退室を促され、そのまま応接室を出た。
初めての剣術の訓練から三日間も寝ていたので、身体がすっかり怠さを感じてしまっています。
本来なら休養を取らなければいけないのでしょうが、この鈍った身体を本調子に戻していかなければなりません。
本来なら誰かの指示を待つべきなのですが、いま自分のしなければいけないことぐらいわかります。
そう、身体を動かして、翌日からの訓練に備えることです。
僕はすぐに騎士団宿舎に戻りました。
今ならまだ食事の時間に間に合うという考えからです。
こんなとき時計を持っていれば時間が分かるのですが……。
宿舎に戻って僕を出迎えたのは、ボロボロになった部屋でした。
ベッドは刃物で切り裂かれたかのような跡があり、机などはすっかり割れてしまっていました。
クローゼットに入っていた服もわざわざ引っ張り出したのでしょう。
ビリビリに破られてしまっていました。
そんな中、壊れた机の上に一枚の紙が置かれていました。
壊した机にメモ書きを置くなんて、余程ヒマな方がこんなことをしたのでしょうか。
そんなことを考えながら、メモに目を通します。
メモには、騎士団の訓練場に来いと書いてありました。
いつもはまったく働かない頭の中で、“あぁ、犯人は馬鹿なんだな”と囁きました。
だって、こんなことを書くということは僕を訓練場でボコボコにしたいということでしょう?
それなのに、場所を訓練場に指定することが考えなしだと教えてきます。
訓練場なんて目立つ場所に呼ぶなんて、人目があることを考えていないのでしょうか。
もし訓練場を使用している人がいなくても、その時間に騎士としての訓練などあれば、サボっていることで犯人だと教えてくれるものでしょう。
ゆえに、今回は頭を働かせられない馬鹿と教えてくれます。
本来なら、こんなことを気にせず誰かに報告すればいいことなのでしょうが、今回のことには思うところがあります。
あまりにも今回の犯人が僕のことを舐めていることに、何と言えばいいか分からない感情が沸いてきました。
だって、そうでしょう?
僕ならば何も言わずされるがままになって、泣き寝入りするとでも思っているかのような考えが透けて見えます。
それは、訓練場に僕を呼び出すことからも察せられます。
お前に正面からこの問題を解決することができるのか?
そう問われているかのような気分です。
そして、続く答えは“出来ないだろうな”です。
つまり、僕は正面から戦うこともできない腰抜けと思われているようなのです。
いつもなら一連の出来事を無視したかもしれません。
奴隷であったいつもなら。
ですが、これから僕は冒険者になろうとしているのです。
舐められっぱなしでは話にもなりません。
だから、僕のことは一つです。
この喧嘩を買いましょう。
そして、ボコボコに伸してやりましょう。
これから僕に逆らえないと思うくらいに。
とはいえ、僕に出来るのは人に頼ることくらい。
だから……。
さぁ、君の出番だよ。人格1。
オプリメン視点
俺は気に入らない。
アイツが、ルエンという奴隷がサリュさんに世話されているという現状が。
俺は気に入らない。
誇り高い騎士団宿舎に、訳の分からない奴隷ルエンがいることが。
俺は気に入らない。
気に入らないんだ、奴隷が優遇されている現状が。
俺が生まれる昔に奴隷という制度が廃止に向かっていき、現状はほぼほぼ奴隷という生き物がいなくなったのは知っている。
奉仕人。
その在り方はもちろん良いと思っている。
弱い者が救われるのは良いことだと思う。
でも、その弱い者がなぜ騎士団で世話になっているんだ。
それも、サリュさんという平民の星の世話になっているんだ。
そう考え出すと、ルエンという奴隷の全てが気に食わなかった。
そんな俺の考えに賛同する騎士見習いはたくさんいた。
今回の計画にも面白そうという理由で協力してきた。
だが、部屋をぐちゃぐちゃにしているうちに冷静になったのか、次々と逃げ出していきやがった。
バレたらどうなるか分からないから。
そんなこと分かりきっていただろう。
たぶん、俺は騎士に向いていなかったんだ。
王都に住んでいて、生まれながらに剣術のスキルを持っていたから。
そんな理由で子供の頃から騎士団の宿舎で見習いとして頑張っていたが、今回の件に関しては我慢ならない。
俺は本当の意味で弱い者を救ってやれるような人間ではなかったのだろう。
弱い者が力をつけようとしている現状を認められず、嫉妬心ばかりが肥大してしまったんだ。
そう、ルエンが奴隷だからとか、騎士団に奴隷がいるのが気に入らないとか、そんなことを理由にしてきたけど、結局は俺の心根が腐っていて嫉妬を抑えられなかっただけなんだ。
騎士団の訓練場でつらつらと考えていると、あいつが現れた。
ルエンだ。
今の訓練場は時間の関係上、他の団員がいるが、もうそんなこともどうでもいい。
つらつらと考えながら素振りをしていたが、それを止め、ルエンに向かっていく。
もちろん、ルエンの分の木剣を持って。
あぁ、今日で騎士団から追い出されるんだろうな。
見習いから本職の騎士になることも出来ずに。
それでも……。
それでも、俺は自分の嫉妬心を抑えることができなかった。
でも、自分の中に残っているなけなしの騎士としての精神から、ルエンと正々堂々と一騎打ちをしようと思う。
あぁ、なんでこんな引っ込みのつかないところまできて冷静さが残っているんだろうな。
いっそ狂っていれば、こんなに考えることもなかったのかねぇ。
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