第17話 これからの予定と神聖国
体力づくり、筋力トレ、文字の習得で日々を過ごしていると、気付けば二週間経っていました。
そんな折、朝の体力づくりの前にサリュが言いました。
「ルエン。今日から一日の内容が変わるから報告しておくぞ」
一日の予定の変化。
僕にとって変化は不安を感じるものですが、二週間も同じ内容でそれなりに辛い日々を過ごしていると、変化の仕方によりますが、少しは楽になるのではと期待してしまいました。
そんな僕自身に気を抜くなと、戒めていると、サリュはにやにやとしながら言いました。
「お前が何を期待しているかが何となく分かるが……。残念だったな。トレーニングの内容に変化はないぞ」
サリュの発言に、少しがっかりとしていると。
「そもそもが、な。筋トレの効果が発揮されるのは約三か月かかると言われているんぜ。二週間でメニューが変わると思うなんて、甘い甘い。ちなみに、体力作りもまだまだ続けてもらうぞ~」
サリュの発言に、そうなのですね、と頷きました。
僕が納得している様子に、サリュは感心したように言いました。
「もう少し不満を顔に出すかと思ったんだが……。その様子だと納得してくれるんだな。そんな良い子ちゃんなルエンにご褒美だ。あと二週間トレーニングを頑張ってこなす様子が見られたら、本格的に戦闘術を教えてやろうじゃないか。お前にどんな武器が合うかは分からんから、そこからになるがな」
「わかりました」
僕の淡々とした様子の返事にサリュが思ったような反応と違ったのか、拍子抜けしたように言います。
「あらら。もう少し嬉しそうにするかと思ったんだが……」
「そうですか?」
「おう。お前ぐらいの歳の子供っていやぁ、冒険譚や英雄譚みたいなもんに憧れるもんよ。んで、武器が振るえるってなったら嬉しそうにするもんよ」
僕はサリュの言葉を聞いて疑問が浮かびます。
戦うことってそんなに良いものなのでしょうか。
痛くて苦しくて、辛いことというのが僕のイメージなのですが……。
そんなことを僕が考えているとは知らず、サリュは言います。
「ちょいと思った反応と違ったが、まぁそれもお前らしさか……。さて、本題を説明するぞ。お前の授業内容が変わるんだわ」
「え? もう良いんですか?」
サリュの言葉に僕は驚きました。
確かに、基本的なカナ文字と漢字は覚えましたが、僕としてはまだまだ足りないように感じています。
だからこその驚きです。
僕の様子にサリュが言います。
「いや、正直まだまだ足りんが、基本的なことは粗方学べただろう? だから、文字や文法の勉強はまだしてもらうが、そろそろ算術や宗教なんかも勉強しねえとな」
つまりは、文字と並行して他の知識の収集をしろということでしょうか。
それならそれで特に思うところはないのですが、少し疑問に思ったことがあったので、サリュに問いかけます。
「サリュ」
「ん? なんだ?」
「宗教って冒険者に必要なんですか?」
「あ~、それなぁ」
サリュは僕に顔を寄せて、小声で言いました。
「お前のスキルってぇのは、神さまが信託として命名したものだろ? だから、神という存在に関して学ぶのは必要なことってのが、この国の考えなわけよ」
サリュに言われてその通りだと思いました。
なので、僕は素直に頷きます。
「了解です。大罪に関して、しっかりと理解します」
そのあとは、いつもの通りに騎士団の敷地内を走り、体力づくりに励みました。
「さて、早朝の体力づくりも終わり、身体もさっぱりして飯も食った。じゃあ、今日からしばらくは教会の方に向かうぞ。っても、王族のために、この王城の敷地内に簡易の教会があるけどな」
「え~と、王城の敷地内に教会ですか……」
僕は王城内に教会が必要なことがあるのか、という意味でオウム返ししたのですが、サリュは僕の言葉を違った意味で受け取ったようで……。
「あ~、教会と国ってのは仲が悪い。それも相当。理由は簡単でな、この世界に唯一残ったと言われる魔法、治癒魔法を独占しているからでな。まぁ、なんだ。王族よりも教会の方が民にとっては人気だし、必要とされる頻度が多いわけよ。だから、国は教会を嫌っている」
サリュの発言に、僕はさらに疑問を覚えます。
なおさら、教会が王城にあるのはおかしいのでは、と。
僕が疑問を発する前に、サリュは理由を説明しました。
「この国の北にある神聖国って呼ばれる国があるんだがな。そこの国が教会を作り、人を派遣している。それというのも、神聖国が宗教の原点に当たる地域を擁しているからだ。曰く、神が初めて降臨した地らしい。眉唾だがな」
サリュはそこで一度言葉を止めると、僕の疑問の答えを教えてくれます。
「遠回りになったが、なぜ王城内に教会があるか、だったな。もっともらしい理由は多々ある。治癒魔法を持っている人間を王族の傍に置きたいから。王族も宗教を信じ、神を敬っているから。本当にいろいろ考えられる……。だが、一番の理由は他にある。それは……」
「それは?」
「この国の弱みを握っているからだと言われているからだ」
「弱みですか?」
弱み。
国同士ですから、弱みというのは極力隠したいはずなのに、一介の騎士であるサリュが何故そんなことを知っているのでしょうか。
疑問に思うことはありますが、サリュの言葉を待ちます。
「この国と神聖国は遥か昔に、魔法使い狩りっていう行為をしたって噂があるんだわ」
「魔法使い狩り?」
「そう。昔々には魔法という特殊な使える人間がいたらしい。ただ、当時の国の代表たちは愚かにも魔法使いが反旗を翻すのを恐れたって話だ。この話に証拠はねぇが、ある程度の根拠っぽいものはある」
そういうと、サリュは指を一本ずつ立てながら言います。
「一つは治癒魔法の存在だ。人のけがを瞬時に癒すという、明らかに人が出来ないことをなしている。二つ目が、魔力の存在だ。極稀にだが、魔力という不思議な力を感じ取る存在が十年だか、数十年だかの感覚で現れるらしい」
二本の指を立てて、サリュは言った後、締めくくります。
「とまぁ、根拠にならない根拠が出回るくらいには、教会とこの国の関係を勘ぐれる。実際、神聖国の国力は目を見張るものがある。要注意の国だ。んで、今から行く教会ってのは、そんな国から派遣された人間だってことだ。ある程度の警戒を持つんだぞ、わかったな」
そう言い切ったサリュは歩みを進めようとしましたが、僕に振り返って言いました。
「いろいろ言ったが、神さまという存在に関して、あの国の言っていることが少しは信用できる。まぁ、自分でいろいろ聞いて判断してくれや」
そう言うと、今度こそ僕を伴って教会に向かい始めました。
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