閑話 ある騎士から見たアレソレ2

今話はかなり短めとなっています。

今週の土日も更新がありますので、よろしくお願いします!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


とある騎士、ゴシェ視点


 

 俺の名前は、ゴシェ・ド・シュヴァリエ。

 俺たち第二騎士団はとある屋敷に向かっている。

 屋敷の主人、ピェーテン・ド・エスクラヴにある疑いがあるからだ。


 それは奉仕人殺害という疑い。

 そもそも奉仕人殺害の疑いはもとからあったそうなのだが、平民出身の騎士であるサリュ・ド・プーデからの定期報告が途切れたために、我々第二騎士団が突入となったらしい。

 それを聞いたとき、貴族の嫉妬ってのはえげつねぇな、と思ったもんだ。

 

 俺たち騎士団は特に問題もなく屋敷にたどり着いた。

 騎士団全員で屋敷の出入りを包囲した後、第二騎士団の副団長が屋敷に向かっていく。

 そして、叫んだ。


「ピェーテン・ド・エスクラヴ!! 貴様には、奉仕人殺害の容疑がある!! 抵抗する気なくば、屋敷の表に姿を出せい!!」


 その宣言のあと、数分も待つことなく、ピェーテンと思わしき男が姿を現した。

 服装も顔も体型も、貴族のイメージを崩さないほどの品のよさだったが、俺たちが気になったのは表情だった。

 笑っているのだ。

 俺たち騎士団を馬鹿にしているのか、と思ったが、ピェーテンの言葉で我に返った。


「我が主の目的は達成された。私は抵抗するつもりはない。屋敷の者は抵抗するだろうが、連れていって構わんよ。さぁ、どうぞ」


 目的は達成された? 

 どういうことだ。

 他国と繋がっていたのか? 何か、邪教にでも魅了されたか?

 分からない事ばかりだが、俺たちは警戒を崩さずに突入した。


 少しばかりの抵抗はあったが、多くの者はすぐに捕まった。

 近年、稀にみる大捕り物になるはずが、あっさりとした終わりを迎えた。

 そう終わったつもりだった。

 一人の騎士が、地下牢を見つけるまでは。


 俺たち、騎士は地下牢に降りた。

 中の様子は悲惨だった。

 言葉に表すことのできない、悪臭。

 はっきりと見通すことのできない、暗闇に包まれた視界。

 そこには、恐怖があった。


 騎士団の数人で、救出をしたところ。

 収容者は五名だった。その内、一名は先んじて潜入した騎士であるサリュ殿だった。

 救出された者たちの見た目は悲惨だった。

 中でも、少年の悲惨さは群を抜いていた。

 その少年は俺を見ているのかよく分からない目で、俺に質問した。いや、独り言だったかもしれない。


「この眩しい場所にだされたということは、僕はどこかで働かなければならないのでしょうか?」


 俺は目を見開かざるを得なかった。

 何を言っているんだ、と。

 だが、働くことが強要されている環境ならば、仕方ないのかもしれない、そう思った。

 すると、自然と優しい言葉が出た。


「しばらくは働かなくていいんじゃねぇか? そりゃ、生きていくには働かなければならんが、君に関して言えば今すぐする事ではないだろ」


 ぶっきらぼうかもしれないが、優しい言葉を送ったつもりだ。

 ただ、少年は困惑した表情をしていた。

 少年が何時から奴隷かは分からないが、相当に悲惨な状況だったのだろう。

 一部しか想像できないが、それだけでもピェーテンに怒りが沸いた。

 近くにいた、潜入していた騎士は微かながらも喜んでいるというのに、少年が不憫で仕方なかった。


 そして、彼ら奴隷の皆が落ち着いた後、彼らは馬車に乗って連れていかれた。

 行先はおそらく王城だろう。

 彼らが今後幸せな人生を送れるように祈った。

 特に、少年の先が良きものであるように。


 少年はおそらく、馬車内にいる騎士が俺の双子の兄弟だと気付かないだろう。

 よく見れば、見た目がそこそこ違うのだが、少年にはきっとわからない。

 何故なら、少年は視界に収める人間を明確に区別しているようには見えなかった。

 丁寧な言葉も、周り皆が敵で、区別する必要がないからだろう。

 少年にとって全てが敵で、周りの全てに従っていればいい。

 そう少ながらず思っているのだろう。

 今後、少年は人を明確に区別できるような、人に興味を持てるような人間になるだろうか。

 いや、なってほしい。

 少年がより良い未来を得るために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る