第10話 予想外の再開

 ブリヤン様の言葉を理解した僕の顔色は、失われているはず。

 それでも、ブリヤン様はおっしゃいます。


「ルエン君、ここまでの話は宰相である私と、騎士団長であるブラーヴン殿の考えに過ぎない。……そして、私は、スキルの表記が気になっている」

「表記ですか」


 ブリヤン様は悩まれているのでしょうか。

 言葉を選びながら、おっしゃいます。


「私たちの国には大罪スキルというのは伝わっているんだが、正式な名称には“種”という表記はされていなかったはずなんだ。……つまり、君に希望を持たせる言い方をすると、このスキルは消える可能性がある」

「消える、んですか?」


 僕はその言葉に期待してしまいます。

 そんな僕の様子に、ブリヤン様は続けます。


「そう。スキルはね。年を経るにつれて劣化したり、心身に異常が発生すると消えたりするんだ。スキルの意味は覚えているかな?」

「意味ですか?」

「そう、私はスキルについて何と言ったかな?」

「特技や技能、と」


 そう自分で言った後、僕は気付きました。


「特技や技能が劣化すると、消えるんですか?」

「そういった事例があったんだ、ただ事例の発生例は少ない」


 ブリヤン様は、そうおっしゃいました。

 ただ、僕の期待する雰囲気を気遣ってか、ブリヤン様は続けます。


「スキルの表記は特技や技能。それ自体が消えるのは余程のことが発生しないといけないんだ。例えば、剣術や鍛冶などの腕が必須の技能を持つものは、腕をなくすと技能の表記が消えたらしい。あくまで噂だがね。眉唾な話だが、君が希望を持つにはスキルが消える事にかけるしかないだろう」


 ブリヤン様の言葉を聞いて、僕のしなければいけない事は決まったかもしれません。

 ただ、僕がこのままスキルが消えなければ、どうなるのかも気になりました。


「ブリヤン様。もし、僕のスキルが消えなければ、鬼になってしまうのでしょうか」

「おそらくね。このままスキルが消えなければ、察するに、君は複数の能力を所有した史上最悪の鬼になるだろう」

「そう、ですか」


 僕は、この大罪スキルを消せなければ、人にとっての災厄になってしまうのでしょう。

 でも、消すにはどうすればいいのでしょうか。

 今の僕には、聞くことしかできません。


「ブリヤン様、僕はどうすればいいのでしょうか」

「君の大罪スキルは、《色欲》《憤怒》《怠惰》の種だ。そのスキルらを消す方法はすぐには思いつかない。大罪に反したことを意識すればいいのだろうが……」

「大罪に反したことですか」

「そうだ、《怠惰》を例にすれば、放棄する事をやめる事、だ。常に、思考し、自分のしたい事を探し続けるんだ。そして、やるべきことを放棄しない事だ。今は、これぐらいしか助言できない」


 ブリヤン様は、悔しそうにおっしゃいました。

 そして、続けました。


「もしかしたら、だが。他国に大罪に関する、詳しい情報があるかもしれない。君が何を目指すか分からないが、もし他国に行きたいならば、国の要職に就くか、冒険者になるんだ」

「国の要職……、冒険者……」

「国の要職はさまざまな知識や技能を持ち、家柄も重視される。だから、私がおすすめするのは冒険者だ」

「冒険者ですか」

「そうだ。冒険者は完全な実力主義で、他国に渡るのも自由だ。大罪に関しての情報を集めるならば、相応の信頼ある冒険者にならなければいけないが、まだ可能性があると思う」


 僕の進むべき道は、決められました。

 冒険者になり、大罪に関する情報を集める。

 そうすれば、僕の中のスキルは消えるのではないでしょうか。

 僕がこれからの道を決めると、ブリヤン様は気持ちを切り替えるようにおっしゃいました。

 

「さて、難しい話が続いたが、これからの話をしよう」

「これからですか?」


 さっきから、僕はオウム返ししてばかりです。


「そう。これから、君が冒険者になるにしろ、色々な技能が必要になる。文字を覚えたり、計算を覚えたり、スキルを学んだり、戦闘訓練をしたり、色々な」

「それは……。そうですね、学ばなければなりません」

「よろしい。では、しばらくは騎士団の宿舎でお世話になりなさい」


 ブリヤン様のおっしゃったことについて、僕は遠慮してしまいそうになります。

 ですが……。


「よろしくお願いします」


 僕は、遠慮せずに受け入れました。

 誰かの迷惑になることに、激しく抵抗があります。

 ですが、僕にできる事は現状ありません。

 今はブリヤン様のおっしゃる通りにした方が、僕にとってもいいはずです。

 僕の言葉にブリヤン様は満足したのか、おっしゃいました。


「じゃあ、君の案内に騎士を呼ぼう。私とブラーヴン殿は、まだ相談することがあるからね」

「はい、ありがとうございます」

「構わんさ。むしろ、私たちは謝罪しなければならない。救出と発見が遅かったことに。そして、君を援助することは国の為でもあるからね」


 最後は、茶化す様におっしゃいました。

 その後に、ブリヤン様はブラーヴン様に指示を出しました。

 

「ブラーヴン殿、ルエン君の安心を獲得できそうな騎士はいるかな? 候補がいるならば、呼んでくれ」

「一人ほど心当たりがあります。呼んでこさせましょう」


 ブラーヴン様が部屋を出ていきました。

 すぐに、ブラーヴン様は戻って来られました。


「どうやら、考えていた者が部屋の前をうろうろしていたので、戻りました。入ってくれ」


 ブラーヴン様は、ドア側に呼びかけました。

 すると、中に入ってきたのは同じ奴隷だった5番でした。

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