移の記

1











「やけに今日は色が薄いな」

特徴は白いマントのみ。

そんな獅が、口を開いたのち、こう言った。

「鬼哭啾々」






ズンと

体にかかる力を見過ごす事はできない。

ロは、口を開いた。

「………色動解除」







獅の能力は、「鬼哭啾々」

意味こそは恐ろしいことに加えて、能力はそれ以上。

ある場所に、大きな十字架を立てる。それだけはジャンヌダルクやイエスキリストのように持っている必要がある。だがそれを立てて仕舞えば、あとは左右の支えにまた一つずつ、合計二つの十字架が出るのを待つのみ。

ここで発現するのは幽霊化の能力のみ。

だがここまでの条件も難しいのにも関わらず、更に条件が存在するらしい。

①自身の罪、後悔を思い続ける。

②目を閉じている事。

③周りに光がない事(太陽以下)

これらを満たすことができれば、上の能力は即座に解放される。

その肝心な…………







ロの能力、「色動」

これは単純、色を動かすだけ。

とは言っても動かせるものに制限はある。

①動いていないもの

②燃えるもの

③存在する色であること

これらを満たせば、色は動かせる。












「………帰ってきたが………」

色が戻ってくるのを、獅はその目で凝視する。

色素が戻ってくると言うわけでもなく、色そのものが戻る感覚。なのに対象の物体の生き生きとした活力は変わらない。











ヒュン












それはかとなく、獅はやってのけた。

正面から彼に向かって意図的に投げられた色を、ただ避ける作業。








獅は構える。








「無駄」








(足が動かない?クソ…)







バギィ!!!!







頭を殴る重い音が、森に響く。





(死んだな)





ガードなしであれば間違いなく頭が吹き飛ぶ威力。

だがそれは、後出しの十字架によって守られた。







ロはそんな結果を見ずに、獅の背中を背にしてその場を立ち去ろうとする。

まるで何もわかっていないかのように。





獅が拳を上げる。







ヒュン





パシッ!






殺意こめられたそれを、ロはなんなく受け止める。





「終わりだとは思っていませんでしたよ?アレを避けた人ですからね」

「………嘘」





そこから攻防は続くと思いきや、二人は闇に隠れたその顔を、歪ませた。








「明属だろ?そんな顔をするなよ」

「……………お互い様では?」








これは憎しみでもなければ、優しさでもない。


ただの、感情。


誰ともなく止められない、諸刃の剣。







やがて口元は上がる。


殺意しか感じさせずに。






























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