1
「……」
威が口を開かずに言葉を発す。
敵の予感。
「……」
カットラが敵の存在を感知する。
両者の間は200m程。
場所はカットラの精場へと移る。
ザーー
雨がとめどなく降っている。
そのせいで彼の髪が濡れるが、そんなことは気にしてもいないかのように頭を振る。
もっぱらフードで顔は隠されている。
半径10mの外では晴れている。
が、そこだけ雨。
ただの不運ということはなく、これは彼の精が具現化した「翻雲覆雨」
悲しみから生まれたナニカ。
が、それとは対照に、威の精場には一羽の梟がいた。
「くるっぽー」
鳴きながら毛繕いをするその姿は単純な作業な筈なのに目が離せない。
「枌、行ってくるよ」
その梟、枌に声をかけたのち、彼は精場から居なくなる。
立っていたのは内側から4本目からか。
外は、豪雨だった。
ザーザーとやむことを知らない雨は容赦なく両者を襲う。
そんな中敵の存在を感知している二人は、それぞれの策にでる。
威は腰からピストルを出す。
可能収納弾数は5発。
その中に弾が入っていることを確認し、カチャ、とその銃口を敵の方へと向ける。
カットラは右手の掌を下へと向け、ただ何かを待っている。
それがくる時間は、近い。
(何も動かず、変化しない……、心理戦か?)
深読みをしリスクをできる限りおわまいとする威は引き金に手をかけたままとなってそこから動かない。
が、すぐして力を入れた。
(……………まもなく……………)
カットラは右手をそのままに左手の人差し指を上へと向ける。
何かの儀式かとでも思うような不思議な容貌。
そして弾は撃たれた。
ダァン!!
森の中に銃声が響く。
それはまるで合図のよう。
だがそんな意図は二人にはない。
そう、二人には。
「やったか?」
筵から頭を出し歓喜しようとした刹那、
ダァン!!!!
後ろに、何かが落ちた。
恐る恐る顔をむけてみると、元々あった木々が黒くなり、焦げている。
消火しきれなかった火がチリチリと音を立てて小さくなっていく。
雨から考えるにこれは雷。
だがこんなピンポイントに打たれたということは、相手の能力。
彼は足を後ろへと向け、相手とは反対側に走っていく。
我武者羅に。
当たり前だ。相手十分のフィールドで進んで戦いたいと思う者はいない。
だがいくら走っても、先が見えない。
正常な考えができなくなった彼は、無限に続く空間だと思ってしまう。
いつ次の雷が降ってくるのかもわからない。
雨がいつやむのかもわからない。
それまでは、戦うしかないのか。
腹を括ってもう一度ピストルを構える。
彼の精の感知は正確であり、誤差がない。
が、囮などの策には滅法弱い。
精が分散しているからだ。
一定の量以上を持っているものを感知する能力は、精が大きい人と合間見る時に使い物とならない。
その場合は、勘が働く。
彼にそのような能力はないが、それに頼るしか道はない。
ザーザーザーザー…
雨は降り続ける。
二人の邪魔をするように。
「………やれないか………」
カットラが呟く。
彼の能力は、雲。さらに詳しくいうと、+-の移動。
能力、翻雲覆雨は一定距離の中で雨を降らせる。
また敵をロックしているとその敵の頭上を中心にずっと追いかけ続ける。
雨粒の中には+電荷が入っており、それを敵に降らす。
そして雲を生成し、-電荷を敵の方向に向ける。
あとはお迎え放電の発生を待つのみ。
一見すると、最強。
だが、穴はある。
どんな能力にも。
「くるっぽー」
頭の中で枌の鳴き声が響く。
威の足は止まらない。
いつ攻撃が来るのかがわからないから。
尚且つこの雨の中、何も見えない。
だから、呼んだ。
「……枌、力、貸してくれる?」
「くるっぽー」
ブワッと
カットラはナニカを感じる。
まるで自身の場所が侵されたような感。
言葉には表せないが、ただ、恐ろしい。
まるでどこに居ても誰かに見られているような。
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