混乱続く③
ー何だったんだろう・・・・・・?
目が覚めてからとにかくいろんなことが起こりすぎてとっくに祐希の頭はパンクしていた。とにもかくにも今、自分がどんな状態なのか・・・・・・異世界人と言われていたが本当に異世界なのか。それから、元の世界に戻って大好きなゲームの新エピソードを見なくてはいけない。
やることが分かれば話は早い。とりあえずは手元のメモを見てみることにしよう。メモにはお役立ち情報が書かれているのが相場というものだ。祐希はポジティブに考えることにしてメモを開く。
『異世界人保護法並びに異世界人に対する救済措置』
「え・・・・・・?」
思わず口からこぼれた一文字に続く言葉を飲み込む。役に立つって、いつ?そもそもその法律を調べられないのでは?疑問と不満が渦巻く中でもう一度メモを見てみる。
そこには書かれていたのは先ほどから何も増えていない情報とそれから薄くホログラムのように入っているツタ植物のようなものと不格好な狸のイラストだが佇んでいた。本当に狸かも怪しいそれに今度はため息が漏れた。
「お待たせ!!!!!」
響き渡る声に祐希は肩をビクリ震わせる。それから頭をよぎったお忍びの言葉に手元のメモを隠した。
「やだ!驚かせちゃったわね!」
目覚めたときに見たのと変わらない笑顔で女性は言った。
「ここは国境が近いからお医者さんが少ないのよ~!もう!捜し歩いちゃった!」
祐希の相槌を待たずにぺらぺらと話す彼女になんとなく『元の世界の親しみやすいと噂のおばちゃん』が頭をよぎる。いや、おばちゃんって全国的にこんなものかも、なんて失礼なことを考えている間もずっと一人で話し続けている。いよいよ脱線が過ぎたあたりで不思議そうな表所の医者が現れた。
「何をしているんですか」
一緒の現れた看護師が訝し気に声をかけてきたのに女性はからからと笑った。
「同郷かもってんでテンションが上がっちゃたの!」
「あぁ、彼女、異世界人ですものね」
女性の言葉に看護師がうなずく。
「ひとまずは状態を確認しましょう。」
脱線しすぎた私たちを改めて医者が引っ張り戻してくれる。ひとしきり問診をすると医者は異常がないのでいつでも退院可能だと太鼓判を押した。ただ、その退院が問題だ。だって周りの話を聞く限りは祐希は異世界人。住む場所はないのだから。
「よかったわね!あんた行くところなんでしょう?私のところにおいで!」
異世界アイドル成長奇譚〜あいろま〜 七篠愛 @nanashi_mei
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