混乱続く。①

祐希が次に目を覚ますとベッドの上に居た。今度はどこだろう。願わくば、駅の医務室とかそういうものだと良いのだけれど。祐希は小さく祈りながらも体を起こす。

「目が覚めたのね!?」

顔の近くで響く甲高い声にびくりと肩が震える。いったい誰だろう。困惑する祐希をよそにその女性は続けた。

「よかったわ!!警ら隊から同郷じゃないかと言われて駆けつけたのよ〜!!」

しっかりと顔を見れば、なるほど彼女は確かに日本人だろう。女性の後には煉瓦造りの壁と複数のベッド、それからお揃いの衣装をきた人々が慌ただしく動いているのが見えた。

「ああ!!」

再度響く大声に目を丸くしていると、女性はにこやかに笑った。

「先生をよばなくちゃね!」

部屋の状況や彼女の言葉はそこが病院であると如実に示していた。


いったい自分に何が起こっているんだろう。あたりの喧騒をよそに真剣に考え込む。どうしたって、何が起こっているのかわからない。状況を整理しようにも得られた情報はほとんどない。あるとするならば・・・・・・

「異世界人」

妙にタイミングよく投げかけられた言葉に小さくそう、とうなずく。

「あぁ、やっぱりそうだ。君は異世界人だよね?」

「え・・・・・・?」

その声に祐希は顔を上げた。それから、その容姿に思わず息を呑んだ。

「ごめんね、おねーさん。知り合いと似てたから思わず声をかけちゃった。」

淡くピンクがかったブロンドの美しい髪に青い空と稲穂をうつしとったようなアースアイ。それから、まるで羽のような軽やかで優しい声の少年がこちらを見ていた。

「おねーさん?大丈夫?」

心配そうに伏せられた表情に祐希は思わずため息が出るのを感じる。おねーさん?と再度の呼びかけに祐希は気を取り直すように首を振る。

「あの、大丈夫、」

困惑で途切れてしまった言葉でも少年は笑顔を浮かべた。

「よかった!」

はつらつとした笑顔に思わず、祐希まで笑顔になる。少年はつづけた。

「そう!おねーさんの髪色!きっと異世界から来たんだよね!」

僕の知り合いもそうなんだよね~!なんてのんきに続ける少年に祐希はひやりひやりと現実が襲ってきているように感じた。

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