17. 魔性の女(5)
その週の土曜日の午後、ベッドに裸で横になる紗耶香の腰のくびれを指でなぞりながら、夫の弁護士から損害賠償請求が来たというと、
「ほうっておけばいいです」
と紗耶香は事もなげにいった。
夫はとっくに追い出したという。
「どうする?」
「どうもこうも、離婚手続きに入ります」
別居はしたが、離婚にはまだ動いていないということか。
「不貞を働いた妻からは、離婚請求できないはずだが・・・」
「不貞?・・・わたしは浮気ではなく、本気ですから」
本気といわれてうれしかったが、内心は冷や汗ものだった。
次の上海出張から3週間ぶりに帰って、翌朝出社すると、すぐに紗耶香が社長室にやって来て、
「離婚成立です」
と満面の笑みを浮かべていった。
朝から打ち合わせの予定がたくさんあったのでランチに誘った。
「あいつは、結局はお金です。家を売ってキャッシュを半分あげるといったら、すぐに判を突きました」
マナーにうるさい紗耶香にしては珍しく、目の前のパスタには手をつけず、宙に浮かせたフォークで夫を刺すようなしぐさをした。
いったん両手で持ち上げたデザートのコーヒーカップをソーサーにもどした紗耶香は、
「ああ、いいこと考えた・・・」
と潤んだ目を向けた。
「この現金を頭金にして新しい家を買います。いっしょに、この週末に家を見に行きませんか。キッチンの広い家がいいなあ。・・・こう見えてわたしお料理得意なんです。毎日おいしいお料理を作って差し上げます」
これには、ぽかんと口を開けるしかリアクションができなかった。
じぶんを見る冷たい眼差しに気がついた紗耶香は、急におしゃべりを止め、黙った。
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