第23話怒り

俺はアルテの村から町に向かっている・・・はずだ。森の中で迷子に近い。警報の鐘が鳴り魔物の襲撃と分かったので俺は村を離れる事をアルテに伝えた。

どんな魔物か知らんが戦えば勝てると思うがこんな村のこと知ったことではない。アルテには好きにするよう命じてさっさと村の出入り口から出ようとしたところで声が聞こえた。「私はできるだけ戦います、すみません」と言い村の奥へ走って行った。俺は・・ああ・・そうだよなあ・・神様に言われて俺に従ってただけだよな、と確信しそのまま村を出た。

もともと無理くり犯したようなもんだ、惚れてくれている、だとか俺を1番に思ってくれているのだ、とかはあるはずのないことだ。全部ぶんなげた気持ちで森を歩いて行った。鉈で道を切り開きながらさくさく進む、歩きながら考える、村を出るといった時に俺はなんて言ってほしかったんだろう、貴方と一緒に行くといってほしかったんだろうなーなどと、無かった事を思いながら鉈を振っていた。

背嚢に食料はかなり有るとはいえ、今どこなのか、後どれくらいで町に着けるのか分からない状況で考え事はすぐにしなくなった。

途中でイノシシみたいな魔物やクマっぽい魔物が出たが鉈で首をおとして食料にした。内臓を傷つけると臭みがでるって昔にテレビで見た気がする。腹を縦に割いて内臓を引きずりだして捨てた。変な膜っぽいもので臓物が覆われていたのでそれごと捨てて毛皮ごと火にかけて毛を焼き、皮もしっかりと火を通して食った。牛豚鳥しか食ったことがない前世の記憶をたよりに肩ロースって言葉を思い出し、肩らへんの肉から食った、うまかった。

時間はわからないけど20回を超える朝を迎えてようやく森を抜けた。1日前から木の間隔が広いような気はしてたんだがそれは一気になくなり草原に出てきた、草の高さは膝程度で見える範囲には町は無さそうだった。蛇行するのはいやだったので日の出から1時間だけ日の出方向に向かって走った。全力で走っているが体感で時速40キロ前後でてると思う、3日目の途中で道っぽいところに出た。右か左どっちにいくかちょっとだけ悩んだが左に進んだ。多少でこぼこした地道だが草原よりも歩きやすい。左手に草原があるんだが境目にはずっと柵がある右側は見たことのないくらい大きい畑、下手に突っ切って泥棒と思われるのも嫌なので地道を行く。時間制限がなくなったので周囲を観察しながら歩く、3時間くらい歩いただろうか、ここらで火を起こして肉でも焼こうかなーと延焼しなさそうな所を探してみる。微かに血の匂いと人の声が聞こえた。匂いと音のする方を注視しながら歩いた、近くなると状況が見えてきた、足を止め観察する。鎧を着て盾を構え片手に槍と剣をもった者が6名、少し後ろで剣を両手で持っている明らかに豪華な鎧の男、対峙しているのはでっかい熊が2頭、大きい、途中で狩った物より2周り位ありそう。1頭だけは2本足で立っている。普通?に4足で立っている方は怪我を負っているのか少しふらついていて足元にはかなりの血が落ちている、4足の方がやや小柄で荒い息使いをしていたと思ったら後ろ足を地面につけしゃがんでいるような恰好になった、それも長くは持たず小さい(と言ってもでかいが)熊が倒れこんだ、6人の鎧の奴らが好機とみたのか立ち上がっている熊に攻撃を開始した。熊も両手をふり3名にかなりの深手を負わせたが槍と剣で致命傷を負ったようだ、もう長くは持たないだろう

命をかけた渾身の、最後の一振りを残った3人に向けて放っている。

盾により防がれた、鎧の男たちは数メートル吹き飛ばされたが盾のおかげで損傷は少ない、立っていた熊は小さな咆哮を最後に倒れた。

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