34日目 脳内BGM(無料プラン)
小学生の頃から、GootubeMusic、略してグーツベに、僕はお世話になっている。
このアプリが他の物より優れているのは、なにより無料というところだ。一応有料プランもあるようなのだが、子供の頃はそんな物には手を出せないし、成長してからはもう無料プランのやり方に慣れてしまっている。
グーツベが流行り始めたのは、頭部への拡張現実インターフェースが広まったことも関係している。拡張現実インターフェースに接続して音楽アプリを流すことで、実際には静かな場所であっても、あたかも周囲に音楽が流れているように聞くことが出来るのだ。
これに合わせて、グーツベのエモーション連動機能を使うと、あたかもドラマのBGMみたいに、周囲の状況に合わせて音楽が流れてくれるのだ。楽しいときは楽しい音楽が流れ、悲しい時には悲しい音楽が流れる。集中力が必要な時にはそれ用の音楽が流れるし、眠るときにはリラックスムードの音楽が流れる。
受験の時期だったか、長時間集中する時は音楽を切った方が良いと言われ、グーツベを切って過ごしてみたこともあったのだが、無音の世界というのは実に寂しく感じてしまった。音楽がないことで、なんだが周囲がシーンとしてしまっているように思えてしまうのだ。
結局その時も一時的に試して、すぐにグーツベを再開したのだが、その時には自分の感情を取り戻したような、そんな気すらしたのだった。
結局、受験も音楽を聴きながらこなし、僕は大学へと合格することが出来た。高校時代から付き合っていた彼女も一緒の大学に進学した。
順調な生活だったのだが、僕は大学の授業で会う一人の女子が気になり始めてしまった。
思えば、その女子とは初めて会った時から少し違った。目が合った時に少し音楽がいつもと違う曲調になったのだ。僕はそれを不思議に思った。普段の授業であれば、そんな風にはならないからだ。
その女子は同じ学科のようでいくつかの授業で同じだった。集団で討論する授業の中でお互いに自己紹介をして話したときには、僕の脳内に流れる音楽は明らかに高鳴りを見せた。付き合っている彼女の事を思い出して罪悪感を覚えるのが最初だったのだが、その後も曲調は収まる事無く、僕は彼女を特別視していることを認めざるを得なかった。
その女子は名前を渡辺さんというらしい。彼女は授業の後に、なんでもないことを僕に話しかけてきたりしてきた。僕は牽制するように彼女がいることをアピールした。しかし、渡辺さんは「モテるんですね」と言うだけで、あまり気にしていない様子だった。
僕は、彼女も僕のことが気になっているのか、と最初思ったのだが、それはうぬぼれだったようで、僕自身が気にしすぎなのだろうか、と疑心暗鬼になった。
一度意識してしまったのが良くなかったのか、今まで陽気な音楽が流れていたはずの彼女とのデートにも、なぜか冷たい曲調の音楽が流れ、悲しい雰囲気のメロディーが流れるようになってしまった。そんな様子が僕の態度にも出てきていたのか、最近は会う頻度も少なくなってきてしまった。
理性の上では未だに彼女の事が大好きだし、渡辺さんはそんなに可愛いとも思えない。しかし、きっと僕は今の彼女と別れて、渡辺さんと付き合ってしまうのかもしれない。
*
大学で出会った男の子と仲良くなれて、私はGootubeMusicのPremiumプランの効果に驚くしかなかった。
グーツベは無料アプリと言うこともあって、多くの人が使っている。Premiumプランだと、無料プランの人に対して、自分の感情を伝えてくれるのだ。
実はこれはもともと入っている機能なのである。片方が喜んでいて、片方が悲しんでいたら、喜んでいる方に相手の悲しみを、悲しんでいる方に相手の喜びを反映して、お互いの感情への気づきを伝える。
Premiumプランは、その伝え方を変えてくれるもので、私の感情を優先して伝えてくれるのだ。だから、私が気になった相手は、私のことを気にしてくれるし、私が楽しんでいれば楽しくしてくれる。彼女とのデートを尾けてみたら、悲しい感情を伝えてくれたようだ。
この機能は恋愛だけではなくて友人関係にも使えて、私が楽しいと周りも楽しんでくれる。それに、つまらなければ皆つまらないので話を変えてくれるので、とても居心地が良い。
もちろんPremiumプランは誰もが使える訳ではない。私の父が音楽会社の社長なので、紹介されて大学への入学を機に使い始めたのだ。
他の人には悪いけれど……、でも彼らだって、対価として無料で音楽を楽しんでいるのだから、文句はないだろう。
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