第12話
家に帰ると、薬草を複製し、収納箱に入れる。
台車を玄関の横につけると家に入った。
「ただいま」
「お帰りなさい」
と、居間からカトレアさんの返事が返ってくる。
私は居間に行くと、換金したお金をカトレアさんに渡した。
「あら、結構高く売れたわね」
「うん」
「どうしたの? ニコニコして」
「え? 何でもないよ」
「そう」
カトレアさんは、お金を持ちながら、笑顔で立ち上がり、引出しにしまった。
寝る準備を済ませ、布団に入り、今日の整理をする。
手持ちの薬草【42個】
手持ちのお金【153P】
依頼の期限【明日】
考えたら、本当に凄い体験をしているわね私。
なんで複製能力を手に入れ、この世界に来たのかしら?
━━まぁ、考えても分からないか
次の日の朝
玄関からノックが聞こえる。
運送屋さんかな?
玄関に出ると、一人の男の人が立っていた。
後ろには、木製のリヤカーが置いてある。
「こんにちは、運送屋です。サイトスさんに頼まれて薬草の回収に来ました」
「はい、すみません。数が多いので裏に回って、もらえますか?」
「承知しました」
と、運送屋は言って、リヤカーを移動させる。
私は収納箱の鍵を外すと、リヤカーに数えながら薬草を移動させた。
「確かに受け取りました」
と、運送屋は言うと、首掛けバックからお金と手紙を取り出し、差し出した。
私が受け取ると、運送屋は「ありがとうございました」
と、頭を下げ、帰って行った。
何かしら?
手紙の封を手で破き、中身を取り出す。
手紙には今回のお礼と、今後、定期的に薬草が必要になると思うから、8日毎に運送屋を送るので、30個、用意してほしいと書かれていた。
私は家に入ると、もうカトレアさんに隠しておく必要もないので、すべての事情を話した。
「そう……そんなことしていたのね」
「今度からは定期的にお金が入るから、毎日15P払うね」
「そう? ありがとう。苦しかったら言ってね」
「うん、私の方もね」
「さて」
と、カトレアさんはゆっくり立ち上がる。
「ミントちゃん。ちょっと手伝って欲しいのだけど」
「なに?」
「畑仕事」
「え?」
「薬草の栽培を再開しようと思うの」
「何で? それだったら私が……」
「これから定期的に必要になるんでしょ? きっとそれが広まれば、その薬草はどこから来たの?ってなるでしょ」
「そうか……ごめんなさい。考えてなかったです」
「大丈夫よ。それだけ私達夫婦の薬草が広まって、人々の役に立てるんだって思ったら、嬉しいから」
「それにミントちゃんだって、いつかは居なくなる日が来るでしょ。頼ってばかりじゃ、いられないわ」
「カトレアさん……」
「大丈夫。心配しないで、何とかなるわよ」
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう。さて、錆びている農具を綺麗にするところから、ゆっくり始めましょう」
「うん!」
外でしゃがみながら、クワをヤスリで磨き、丁寧に拭いていく。
そこへアラン君が現れた。
「お、珍しいことしているな」
「今度から、薬草の栽培を始めるの」
「へぇー、いっぱい出来るといいな」
「うん」
「なぁ、ミント」
私は汗を手の甲で拭うと「なに?」
「魔物退治をしていたら、毒を吐く魔物を見つけたんだ。危ないから退治したいけど、毒消し薬が、なかなか手に入らなくて、困っていてさ。どうにか、ならないかな?」
「カトレアさん。この薬草、毒消しに使えるかな?」
カトレアさんはクワを拭くのをやめると、腕で汗をぬぐい「これだけでは駄目じゃないかしら? サイトスさんに聞いてみれば?」
「あ、そっか。カトレアさん、明日いいかな?」
「いいわよ」
「じゃあ、明日、聞いてくる」
「分かった。それまで待っている」
「うん、そうして」
私は立ち上がると、「あー、腰が痛い」
と言って、バックから財布を取り出した。
中からお金を出して、アラン君に渡す。
「薬草は足りてる?」
「うん、大丈夫」
「そう。じゃあ、また明日ね」
「あぁ、明日」
アラン君を見送ると、また手入れを再開した。
その日の夜。
今日の整理をする。
手持ちの薬草【20個】
手持ちのお金【578P】
依頼の期限【8日】
疲れたー……。
でも今日は、気持ちよく眠れそうだ。
カトレアさんの気持ちに感謝しつつ、眠りについた。
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