11話 キッチンでお願いできます?
『ざっしゅざっしゅ』
うるさくて眠れん。
妖怪め、とうとう夜中に現れたか。いや、それが普通か。
『ざっしゅざっしゅ』
「うるさい!」
今度は一体何が出た? 取り敢えず明かりを。
『ムギュ! ざっしゃん!』
「痛あ……ああっ頼まれた小豆が!」
誰? なんか踏んづけて蹴飛ばした様な。
あ、明かりがついた。
「おい、なんの騒ぎだ」
猫又か。器用な奴だな。
「小豆洗いか。何でここで洗ってる」
小豆洗い? 一生懸命何か拾ってザルに入れているコイツ?
「ここは霊気が強いから洗うの
「どういうこと?」
「お前が小豆洗いを踏んづけて、ザルを蹴飛ばし小豆をぶちまけた。だが何か変だ」
確かに。
「頼まれたって誰に? 普通自分の小豆を洗うのでは? 特別な小豆?」
「観世音菩薩様から預かった365と108と8個の小豆」
菩薩様? なぜ小豆? なぜ妖怪に? それになぜ3つに分けて言うんだ?
「猫又、今の数字の意味わかる?」
「最後の8個は多分、八犬士のことかな」
「八犬士?」
もしかして。
「365は封神台で、108は水滸の
「その通り! 時間までに洗い終えないと!」
小豆に封印? 小豆洗いに洗わせる為に見た目を小豆に変えたとか?
「洗い終えないと何か起きるの?」
「封じられた奴らの一部が実体化するとかか?」
「そうじゃ。その上儂が菩薩様に消されてしまうかも」
小豆洗いが消滅するのは別にいい。
「何で中国の神様やらなんやらが混ざっているの?」
「知らんがな」
「おい、手伝わんとまずいんじゃないか? 小豆洗い、洗う時間はあとどれくらいあればいいのだ」
「ええと今九つ半だから八つ半までに全部集めて、明け六つまで洗えば」
「猫又、翻訳して」
「今から3時までに集めて、朝6時までに洗い終える」
この部屋にどれだけ実体化するのか。365+108+8……
「手伝う手伝う! まずこれで一気に!」
紙パックをきれいなものに取り替えて。
「なんじゃそれ」
「掃除機」
「罰当たりめが! ゴミと一緒にするな!」
「だから新しい紙パックに変えたよ」
「おい。ホコリやゴミも吸い取ったらどうなるんだ」
あ。しかしだな。
「一気に吸い取るから、死ぬ気で洗え」
「やめてくれい!」
スイッチオン!
よし、見える範囲は吸い取った。紙パックの中身をザルに。
「あああ、ホコリまみれに」
「それより何個足りない?」
「む……3個」
「その3個は何?」
「
黄天祥と犬江親兵衛はショタ、いや子供で問題なさそうだけど……
「李逵って水滸伝の?」
「他にはいないだろうな」
猫又、なぜ落ち着いている。奴は取り敢えず殺す、気に触れば殺す、なんとなく殺す、そういう狂戦士だ。
「せめて李逵だけでも回収せねば!」
「一応ここは俺の縄張りだし、探すか」
「いや、3つとも探して。儂が消される」
3時まであと30分。この部屋のどこかに小豆が3つも?
「ひとつあったぞ。これはなんだ」
「犬江親兵衛」
おい!
「あ、あった。これは黄天祥じゃ」
ひいいいい!
一番やばいのが見つからない! あと10分!
「小豆洗い、
「馬鹿を言うな」
「あ、お前動くなよ」
「え?」
『ベシッ』
なぜいきなり叩く。
「髪の毛に引っかかってたぞ」
許す! 猫又ありがとう!
「まず洗剤で汚れを全力で落とせ! そして霊気の強い所で必死に洗え!」
が、頑張れ。
「ちなみに江戸時代の時間はかなり適当だぞ」
なんですと?
「なんとか洗い終えた」
間に合ったのか。って、いきなり何この光。何も見えない。もしかして後光という……
『ご苦労様でした。はい、貴方の小豆。洗って貰ったのと交換ですよ。ええと確認しました〜またよろしくね〜』
光が消えた。ぎりぎりセーフ。
しかしとんでもない御方に会った気が。
「今度から誰にも見つからない所で小豆洗う」
小豆洗いは冷蔵庫から出ていった。
「もう無理。寝る」
私はベットに倒れ込んだ。
「おい、締め切りとやらは今日ではなかったか? いつも手渡ししていたようだがいいのか?」
良くない。
私は慌てて洗面所に駆け込んだ。
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