第12話 幼馴染 2

年上の幼馴染とは正直、本音をお互いに隠していた。


しかし、私の父と彼の父が、死んだ事により、


そのかせは無くなり、お互い、本音で話すようになった。


そしてお互い、真逆に見ていた事が判明した。


彼は私の頭は良く無いと思っていた。


私は逆に少しは賢いのかと思っていた。


しかし、年上の幼馴染は私よりも遥かに下にいた。


私は友人は選んで作っていた。


彼、程度は絶対に友人にしない程、愚かなのが真実だった。


私の自殺を止め、本音で少し話しただけで、私はすぐに気づいた。


彼には絶対理解出来ないと。


私は母親にお前も絶対に来いと伝え、


先に居酒屋の個室に二人で入った。


私には話した所で、理解に達しない彼の反応も


未来が見えるほど正確に分かっていたが、話した。


彼は私の話を聞き、これまでで一番笑った。涙が出るほど大笑いされた。


私は別段、分かっていたので、その先の展開も知っていた。


知っていたから、今まで逃げ続けていた母親に来いと言った。


彼は私が狂ってると言い、そんな事、おじちゃんがする訳ないじゃんと言い、


ずっと笑い続けていた。盲目な人間は、人の表面しか見ない。


そして、浅知恵である事を自覚していない。


問題なのは、自信を持ってはいけないレベルなのに、己を過大評価している事だ。


それは人生に於いて、全てに対して、浅い知恵しか身につけていない事を表す。


知る事と、理解することは全く別であり、彼は知っているだけだから


当然、大笑いする事になる。途中で母親は来たが、10分程度で逃げるようにして


帰って行った。私は絶対に許さないと思っていた。逃がさないと。


3時間程度、話したが、話は当然進む事も無く、店を後にした。


そして家に帰り、大きな食卓に母親に座るよう命令し、今度は逃げるなと


怒気を込めて言った。逃げられると思うな。今まで逃げ続け、


少しは現実と向き合う気概きがいを見せろと、私は言った。


人間の本質は、苦悩や絶望した時に、初めてその姿を見せる。


それが本当の姿であり、我々の本当の力が試されるのは


人生に於いて、それほど多くはないが、必ず向き合う時は来る。


そして私と幼馴染は隣の居間で、再び話し始めた。


幼馴染はソファーに腰かけ、私は母親が逃げれない中間地点に


立ったまま話し始めた。


最初は相変わらず、笑っていた。無知ゆえか、状況把握も遅く、


笑いが消えるまで、1時間以上かかった。


母親の顏が青ざめている事に、気づいたからだ。


私なら一瞬で気づく。何故、母親を同席させる必要性があるのかと


考えるからだ。


彼はそれすらも考えられず、たまたま気づいただけであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る