模擬たこパwith元彼 4月29日

 珍しく金田からの返信は早かった。


 金田: 3日なら1日空いてるけど外でもいいよ。


「そうたっ!返事来たっ!外かぁ……うーん」

「外、嫌なの? 」

 そうたが首を傾げる。


「いつも外で食事してホテル行ってだけで、私は当日行く場所もわからずについてくだけなんだよね……。しかもGWだからきっと人が多いし。できれば今回は私のフィールドで勝負したいの!」

 杏梨はこのデートに燃えていた。


「勝負って……」

「だっていつもなんか私だけドキドキさせられて、悲しくなって苦しいんだもん。

 たまには私だって金田さんをどきどきさせて振り回したいっ! 」


 あの飄々とした顔を崩すの!と杏梨は更に燃えていた。


「んーそっかーじゃあ、自分のフィールドに持ち込むために策を考えないとな。家に呼びたいの?」

「うんっ、外だとあの鉄仮面は絶対剥がれない」

 どんな風に笑わせてやろうかと思えてくる。


「ファンタスティック杏梨エンターテイメントよーーー」

 杏梨はテンションが少しおかしくなっていた。


「杏梨ってやっぱりお馬鹿ちゃんなの?可愛いけど」

 そうたも杏梨につられてテンションが上がってくる。


「よしっわかった!作戦会議だ。この空間でどんなエンターティメントを演出するかだな」

 そうたは部屋を見渡した。部屋自体はそこまで広くない。テレビにテーブル、ソファー。別室にはシングルベットがあるくらいで特筆したものはない。マンションの3階だ。


 家。家でできる楽しいこと、パーティー、うーん……


 そうたは閃いた!


「杏梨、たこパしよう!」


 杏梨の目が点になった。


「えったこパ? たこ焼き器ないよ」

 杏梨はたこパをしたことがなかった。


「俺ん家にある。結婚式の二次会のビンゴで当たった新品のやつっ!

 熱々で美味しくて、色んな味を楽しめて一緒に作る内に自然に距離が近くなる!これしかないっ!」


「えっ…ホントに?ホントにそうなる?」

 やったことがないので杏梨には想像つかない。


「やったことないのにできるかな?」

 金田の前で失敗したくない。


「俺が教えるよ!ネットもみてオリジナルの種とかも調べたら楽しいよ!」

「あっ青のりとか歯についてたら恥ずかしいし……」

 たこ焼きとか金田の前で食べられるだろうか。


「そんなの気にしないのがたこパ!絶対距離縮まるからやろう!そうと決めたら今日は金田戦に向けた模擬たこパだ~!

 はい、金田さんにもたこパしたいからお家来てって伝えておきな? きっと喜ぶから」


 本当かな……?

 杏梨は半信半疑でメッセージを送った。


 杏梨: お外もいいんですけど、今回は金田さんと一緒にたこパしたいんです。是非お家にいらしてください。


 そしたらなぜか即行で返事がきた


 金田:わかった。任せておけ。



 ほらねーっと喜ぶそうたに杏梨も胸がワクワクしてくる。

 ただし、その後の模擬たこパの特訓はちょっと厳しかった。

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