バウンダリ編 第3章 第07話 変異

 会議を乗り越えフジに帰還し、小田2尉に先んじて自分の隊を追いかけ始めた飛田3尉だったが、階層によるモンスターの分布がおかしいことに気が付いた、特に50階を超えてからそれは顕著になり、数階分ずれてきている、ふと氾濫かと思ったがそれにしては数が少ない。


 休みも取らずに走り続け、こそっと自分の隊に合流する、班長たちを招集し、なんの異変か気が付いたものはいないか、聞いてみるが原因は不明なようだ。

 速やかに本部に気になる案件として連絡、報告を入れる。


 現在攻略は、70階と80階をこの2年行ったり来たりしているが、先日報告のあった地震から徐々にモンスターが強くなっている、と報告があったのをふと思い出した。

 それにこの深層にいるモンスターの纏っている黒い霧、あれに触れると一気に気力がなくなる、きっとあまり良くない物だというのが分かる。




 後日と言っても数か月後に分かるが、このような異変はいたるところのダンジョンで確認されていく、しかし攻略深度がほかのダンジョンでは浅く発見が遅くなった、実に数か月の後に判明しそのまま大規模な広域での同時反乱となってしまった。

 後年飛田3尉が感じた異変は、ダンジョン反乱の前兆として後に教科書にも載ることになる。もちろん研究所として報告書をまとめ、それを論文として報告したため、残念ながら飛田3尉の名前は載っておらず、現場の士官からもたらされた報告により兆候をとらえたとなっている。ざんねん。



 攻略中のダンジョンがそんな状態だが、導人たちの潜った別の日、軍学校の高等部の実習でダンジョンアタックをしていた戦略研究科の3年生が数名命を落としている。

 これは軍学校では珍しい事ではなく年に数人は命を落とす、ただ今まで幾度も倒された10階のボス、1本角の鬼が予想に反し強かったと報告されている。

 このことは直接魔法科とは関係ないことだが、魔法科の生徒特に3年生は他の科にいた生徒が新設された魔法科へ移動したため友人もおり少し混乱をした、一部の生徒において無意識下の恐怖により、体が動けず後の実習時に混乱したが、これもこの軍学校ではよくあることで、専任の教師たちはまたかで済ましたが、慣れていない魔法科の指導教官たちは、少し眠れぬ夜を過ごした、導人たちもまた今までに行われた実習等でかかわった先輩たちが死亡リストの中に居たためだ。



 小田2尉は久しぶりに明日講師になるため、高等部近くの駐屯地にやって来た、駐車場に車を止め、わき目も振らず5階の導人の部屋に侵入しシャワーを浴びる、勝手知ったる部屋である、そこでふと気が付く・・・見慣れないシャンプーやリンスが並んでいる・・・風呂場から出て部屋を見回すと見知らぬものがいたるところに点在をしている・・・少し機嫌を損ねつつ買い物を冷蔵庫に入れようと扉を開くが以前に比べ充実している・・・


 もう間違いない、抜け駆けしている奴がいる・・・まことだ・・・間違いない。


 不機嫌を、表に出したままソファーで座っていると、玄関から音が聞こえる、導人とまことが仲良く帰宅のようだ。

「あら、水希ねえさんいらっしゃい」

「おかえり、ずいぶんと仲睦まじい様で何よりだわ」

「そう見えます、ありがとうございます」


「・・・ずいぶんと、荷物も持ち込んで・・・同棲でもしているのかしら?」

「そういうわけではないのだけれど、一緒に寝るようになると部屋に戻るのがめんどくさくなって・・・お気に障ります?」

「気にはなるわね」


「じゃあ、今日はお姉さんが来ているから帰ります、ハンバーグはまた明日ね、導人くんそれじゃあね」

「そんなに急いで帰らなくても、ゆっくりしていけばいいじゃない」

「お邪魔はしたくないし、ごゆっくり」

 とまことは部屋を出ていく・・・


「何なのよ・・・」

「最近知り合いだった先輩が、ダンジョンで亡くなってね、俺も知り合いだったんだけど、ちょっと落ち込んでいるんだ、まあそれで一人でいると色々辛いらしくてね」

「えっ・・・そうなの・・・じゃあ悪いことしたわね・・・」


 導人は水希の隣に座り

「そっちも何かあったの?」

「・・・え~、いやそれに比べると・・・たいしたことは無いけど・・・ちょっとぎゅっとして・・・だめ?」

「なんだ単なる甘えん坊ですか?」

「うん・・・そう」

 水希はやきもちだと言えなかった・・・

 年上なのに情けない・・・自分だって知り合いの隊員が亡くなって落ち込む気持ちだって経験して知っているのに・・・

 と、水希は導人にコアラのように抱っこされながら考えていた・・・


 自分の時は、ほかの隊員と酒飲んでしのいだけど、未成年はだめだしね、ほんと悪いことしちゃった・・・

 と考えていたが、ふと横にある導人の耳が気になり、はむっとついかじりつき、驚いた導人に落とされた・・・

「ごめんなさい、驚いて」

 延ばされた手を見つめながら、

「今晩まことも誘って外食に行こう、どう?」

「僕は大丈夫ですけど、まことに連絡してみます」

 

 添い寝の一件で自分が悪いことが分かっているまことは、水希に指摘される予測がついていたためについあたってしまい、態度に出てしまった。

 自分や、導人をめぐる状態は理解しているが、やはり独占したいという気持ちはある。

 部屋に戻り、落ち込んでいたが、端末が鳴り着信は導人からだった、慌てて出ると。

「導人だけど、水希と一緒に外食にでない? どう行ける?」

「あ~うん出る」

「じゃあ準備ができたらこっちに来てね」

 と言って端末が切れた。


 さっきの思いは霧散し、頭の中は導人と外食・・・うふ、となっていた。



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