バウンダリ編 第33話 事件

 ふっ・・・「奴はパンドラの箱を開けちまったのさ・・・」前髪を払い上げながら友也が答える、相手はクラスのスポーツ系女子でかなりかわいい部類の2人、今回の被害者仮名AさんとBさん。


「最近、深見ってすごいよね、あれも言っちゃいけない能力のひとつなの?、あんた達仲がいいんだから何か知らないの?」

 最近、こんなことを聞かれることが多い、ダンジョンの一件以来増える一方だ、女の子に話しかけられるのはうれしいが、内容は深見、深見だ・・・達男と二人少し困っていた、特に自分が気になっていた子から話掛けられるのはうれしいが、やはり内容は深見だ・・・


 しかし、友也はあることを計画していた、クラスのもて男のアドバイスにより、「話しかけられるなら、そのまま自分の彼女にしちゃえよ」、サムズアップし八重歯を煌めかせながら奴は言った。


「奴はパンドラの箱を開けちまったのさ・・・」

「「は??」」

「えっ」友也は女の子のこめかみに怒りマークが浮いているのを見た、何とかしなければ・・・


「・・・こっちは真面目に聞いているんだけど?」

「いやだから、言ってはいけない力の一つに体を強化することができるらしくて・・・それじゃないかな・・・と」

 あっさり情報を売る友也。


「やっぱりそうなんだ」

「何だったら導人を誘ってカラオケでも行かない?」

 必死の形相で話を振る友也。

「あっそれいいね」

 乗ってくるBさん

「そうね、体を強化できるのを何とか教えてもらったら、今伸び悩んでいる成績も何とかなるかしら・・・」

 Aさんは、硬式テニス部で最近試合に勝てず悩んでいた。

「でもカラオケか・・・テニスの練習ばかりで歌って歌ったことないし、男子の前でって恥ずかしい・・・」


「なんにでも初めてってあるよ、してみれば意外と大した事は無いかもしれないよ、試してみないともったいないと思わない?」

 必死な友也。

「それはそうだけど・・・」

「歌ってみると才能があって、テレビなんかにも出れるかもしれないし、何点だーとかって」

「あぁーあれよく見る、出場者のストイックさが伝わるあの努力ってすごいよね」

 スポーツ選手らしい視点で評価するAさん、やった、机の下でガッツポーズをする下心全開の友也、その必死さがやばいレベルで漏れ出しているのを本人だけが気づいていない。


「なんなら、スポーツへの応用とか、その辺り導人に聞いておいてあげようか?」

 無言を貫いていたが突然話をひっくり返そうとする達男。

「えっ、いいの?」

「うん、あいつなら目的伝えて、困ってるって言えばきっと教えてくれるよ」

「「そうなんだ~」」

「じゃあお願いしても良い?」

「ああいいよ」


 呆然としている、友也・・・こっこのままでは不健全なグループ交際の計画が・・・何とかしなければ、どうする? かなりやばい状態でうろたえているのを本人だけが理解できていない・・・


 その時、視界の端に教室に入ってくる導人の姿、これしかない、突然立ち上がり導人に向かって一歩踏み出すが、当然そこには今まで会話していたAさんとBさんが居る・・・二人にぶつかり友也ともども倒れる事となる。


「いてて」

 友也は今の状態を確認し、二人の胸の上にある自分の手を見て思わず・・・にぎにぎとしてしまった・・・

「「・・・」」

 無言で押しのけられ、のけぞる友也・・・

 驚きで一瞬目を見開いた女子二人だが、現状を把握すると目からハイライトが消え・・・友也を押しのける無言の体育系女子二人・・・ゆら~っと立ち上がると二人は申し合わせたように一人がボディブロー一人が下がった顎を天に向けて貫くアッパー・・・目から涙と口から血をまき散らしながら吹っ飛んでいく友也・・・その一瞬の光景はピーテル・パウル・ルーベンスの描いた聖母被昇天の様だった、実際はにやけながら涙と血を流し吹っ飛んでいく友也だったが・・・


 達男は思わず「友也よ・・・命は投げすてるものではない」とつぶやいた・・・

 達男は、

「あ~二人ともごめんね、大丈夫だった?」

 とにこやかにさりげなく2人をフォローし、近づいて来る導人に

「導人、この子たちが相談があるそうだよ、困っているみたいで力になれないかな?」

 と橋渡しをする。

「そうなの? どういう話かな?」


 女子2人も何もなかったように

「バスケットの授業の時にすごい動きしていたのが気になって、私たちの競技に何かアドバイスがもらえないかと思って・・・お願い」

「ああいいよ、基本は武道の重心移動になるから、使えるかどうかはわからないけれど」

「武道なんかやっていたんだ、知らなかった・・・すごいね」

「ねぇねぇ、今日カラオケでも行ってゆっくりお話ししたいの・・・だめ」

「練習は良いの?」

「大丈夫、今日深見君と話ができれば、きっと明日から活躍できるから、ちょうど鈴木君と一緒に行けば2対2だしいいじゃない・・・ねっ、さっきちょっと嫌なことがあったけど気分転換もできるし」

「そうだな、馬鹿なやつが迷惑をかけたから、導人、行けるようなら俺からも頼むよ」

 達男がさわやかな感じでフォローを出し、幸せそうな会話が繰り広げられる。


 その様子を見ていたクラスのの人間は〈鈴木恐るべし!!〉となり、その後当然のように、導人への窓口は達男となった・・・


 その日の放課後薄暗い教室で、夕日に向かい右手に異能を宿したラッキーすけべ生産者である有名物語の主人公の様に「不幸だ―あああ!」と言う叫び声を誰かが上げていたらしい・・・

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