第10話 謎のシャンプー

「そうでもないです。仕事の件ですがいいですか?」

「はい」

一恵と玲奈が返事をすると二人は秘書の経験柄、

手帳を取り出した。

「まず二人には仕事を分担してもらいます」

「はい」


「一恵さんは新宿のジムとキャバクラの方を全部任せます、

飯田さんと連絡を取って進めてください」

亮はブルック、ジャネットと面識のある一恵を選んだ。

「はい、かしこまりました」


「玲奈さんは渋谷のスタジオDをお願いします。

 準備が大変だと思います」

「えっ?渋谷に?」

玲奈は突然降ってわいた話に驚いていた。


「はい、千沙子姉さんが帰国

次第話を進めてください」

「分かりました」

一恵と玲奈はやることがたくさん

あって期待で目が輝いた。


「当分休みがありませんがお願いします」

「はい、大丈夫です」

二人が答えると亮が小妹の方を見た。

「さてケーキを食べようか、小妹」

「本当?」


「もうそろそろ来るよ」

小妹が亮を見ると店員が

大きなフルーツケーキを持って来た。

「キャーおいしそう」

大喜びをする小妹を見ていた

美喜と一恵と玲奈も微笑んでいた。


~~~~~~~~~~

みやびから程近い高級美容室プレステージでは

50歳くらいのブランド服を着ている

女性が髪を染めていた。

「この毛染めは髪をまったく傷めないんです」

美容師は丁寧に刷毛で髪に塗りながら言った。


「はい」

客の女性は上の空で返事をしながら

目をとして吐息を漏らしていて、

シャンプー後の女性もブロー中に

うっとりとした顔をしていた。


プレステージの裏側のビルの5階の

事務所では社長室と休憩室があった。

「社長、大好評です」

店長の笠井が日坂に言った。


日坂は笠井から売り上げ報告を受けた。

「社長、昨日のプレステージで2万円の

シャンプーが東京が20本、

名古屋で12本、大阪で18本売れました」

「小瓶は」


「はい、小瓶の5000円のシャンプーが

3店舗で50本毛染めオーダーが

トータルで232人です」

「よし、従業員に歩合をつけてどんどん売らせろ」

日坂は上機嫌だった。


「はい、それと金村が、気分が悪いと

言って隣の部屋で寝ています」

「分かった、くれぐれも毛染めの時、

手袋を忘れないように指導するように」

「はい、分かりました」


笠井が事務所を出て行くと日坂が休憩室で

横になっている金村のところに行った。

「金村さん、具合はどうかな?」

「頭がふらふらして」


「手袋をしなかったのかな?」

「はい」

日坂はニヤリと笑いながら耳元に息を吐いた。

「金村君、目をつぶって本当の事を言いなさい」

「はい、気持ちいいです」


「うん、うん。どこがだ」

「体中が気持ちいいです」

日坂は金村の手を握り爪で引っ掻くように

わきの下の方まで滑らせた。


「うう」

金村はあまりの気持ちの良さにのけぞった。

「どうだ。感じるか」

「はい、欲しい・・・」

金村は唇を濡らし、体を起こして日坂に迫った。

そしてズボンのチャックを下ろし

トランクスの中に手を突っ込み

日坂の物を取り出し咥えた。


金村はまるでキャンディのように

「グチュグチュ」と音を立てて舐めだした。

「あはは」

日坂は金村を全裸にして抱き続けた。


一時間後金村が目を覚ますと

日坂が目の前に立っていた。

「どうだ、具合は?」

「大丈夫です、すみません」

金村は何事も無かったようにお店に向っていった。


「会長に報告だな」

日坂は笑っていた。


~~~~~~~~~~

亮は午後3時に有楽町イトシアの前に立っていると

和美が黒縁のメガネに紺のスーツ姿でやってきた。

「こんにちは」

サングラスをかけた亮に声をかけられて

一瞬身を引いた。


「あっ、昨日の?」

「すみません、團です」

亮はサングラスをはずして

和美に謝るように頭を下げた。

「和美です。あっ、竹林聖子と申します」


「團さんは外ではいつもサングラスを?」

「はい、竹林さんはいつもメガネを?」

「はい」

「お互い他人に顔を見られたくない

みたいですね。あはは」

「はい」


亮は有楽町から銀座四丁目までの途中の

カラオケ店に和美を案内した。

「すみません、他人に聞かれるとまずいので

カラオケにしました」


そこには一恵と玲奈、小妹と美喜が待っていた。

「お待たせしました」

亮は今までのいきさつをみんなに説明し

聖子は状況を納得し協力を約束した。


「竹林さん、3か月前僕は一文字が放った

刺客に僕は襲われました」

「本当ですか?」

「新村一恵さんが一文字を裏切って

情報で僕に情報をくれたお陰で難を

逃れましたがひどい事です」


「どうして命を狙われたんですか?」

「ヤマト美容学校の乗っ取りとDUN製薬

乗っ取りを僕が妨害したんです」

「まさか・・・」

聖子は恐怖で体を震わせていた。


「一恵さん、一文字とNEL教団のつながりは?」

「1年位前から一文字学園アメリカ校を

作る計画で接触していて、校舎も

NEL教団の施設を使う予定です」

一恵は一文字が進めていた計画を話した。


「FBIの捜査ではNEL教団は麻薬を

使って信者を増やしているそうです」

亮はFBIの情報を話した。

「日本でもそうするつもりかしら?」

小妹が呟いた。


「はい、おそらく」

「それは、今までの信者に対しての裏切りだわ」

聖子が怒りを露にして言った。

「一文字はシャンプーや毛染めに

合成麻薬を入れて輸入している可能性が有ります


「えっ、そんなことまで」

麻薬に対して憎悪を持っていた一恵は

一文字が日本に麻薬を持ってくる事が

許せなかった。


「はい、DUN製薬乗っ取り失敗で

どうしてもお金が欲しいらしい」

「麻薬入りシャンプーなんてどうやって

売るつもりなのかしら?」

玲奈が麻薬の売る方法が頭に浮かばなかった。


「美容院でお客さんに毛染めやシャンプーをして

中毒患者にする方法とシャンプー・リンスから

麻薬成分を抽出して売人を使って売る方法も

あります」


「一文字の具体的な計画が少しでも

分かれば阻止できるんですけど」

「ねえ、どうして一文字はそんなに女に

ひどい事をするの」

小妹が一恵と玲奈に聞いた。


「それは女性に対してひどいコンプレックスが

あると思います」

心理学を学んだ聖子は答えた。


「どういう事?」

「例えば好きな女性にフラれたとか、

金銭面で女性に騙されたとか、

母親に虐待を受けたとか・・・」


「意外と一文字のあそこ小さかったりして、

うふふ」

小妹が言うと一恵と玲奈が顔を見合わせた。


それはどちらも声を出す事が出来ず

沈黙が続くと小妹が自慢げに話した。

「亮のあそこはヘチマだからね。うふふ」

「小妹言っているヘチマは食用ヘチマ

ナーベラーですから」

亮が言い訳をするとそれを聞いてみんなが

ため息をついた。


~~~~~~~

そこに美也子から亮に電話があった。

「亮?」

「はい」

「生きていたの?」


「はい、おかげさまで。

ところでお母さんの具合は?」

「白血病なんです」

亮は白血病と聞いて激しいめまいを感じ

沙織の事を思い出した。


「急性ですか?慢性ですか?」

「急性です」

亮は急性と聞いて落ち着きを取り戻した。


「そうですか、DUN製薬が作った薬があります」

「ほ、ほんとうですか。母を助けてください」

美也子は何度も亮にお願いをした。

「今夜、お店に行きますからそ

の時お話しをしましょう」

「はい、待っています」


そこへノックの音がすると美咲が部屋に入ってきた。

「こんにちは、みなさんお揃いね」

「あっ原さん」

「お久しぶり三島さん」

美咲は亮の肩を叩いて隣の席に座った。


「美咲さんすみません、忙しいところ」

「いいえ」

「実はこちらが先月一葉学園を首になった竹林聖子さん

 です」

聖子は立ち上がり頭を下げると美咲が自己紹介をした。


「原美咲と申します。警察官をしています。よろしく」

「あのう」

聖子はオドオドしていると美咲が微笑んだ。

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