第9話 ハッキング
「私もそう思うけどその勇気がないの、あのヤマトが
変なお店を作ったなんて言われたくない」
「はい」
亮は自分の中にある、もやもやが発散できずにいた。
「あっ、そうだ。雨宮さんにあなたの
生きていることを伝えていい?」
「はい、お願いします」
「彼女きっと喜ぶわ」
ジュディは美容院に残り、五人は歌舞伎町に向った。
飯田とすれ違う強面の男達は次々に
頭を下げ挨拶をすると小妹は飯田に聞いた。
「ねえ、お母さん。みんな頭を下げるけどどうしたの?」
「ああ、気にしなくていい」
飯田は豪快に笑って小妹の頭を撫でた。
目的のビルの三階にエレベーターが止まり
飯田が赤いドアを開けると
ステージに向ってたくさんのイスとテーブルが並んでいた。
「もしかしたらショーをやるかと
思ってステージを作っておいた」
「ありがとうございます、使わせていただきます」
「うん」
飯田は目を細めて微笑んでいた。
「キャバクラは早くても来週ですね」
「ああ、近日オープンの広告は出してある」
「求人の方は?」
「明日から面接だ」
「ずいぶん早いですね」
「お前さんが帰国していなかったら、
他のやつに面接を頼むつもりだった」
「すみません、遅くなって」
「いやいや、明日12時から店で面接だ、
自分の好みの女を選ぶといい」
「分かりました」
「どんな娘が来るか楽しみだな。あはは」
「ところで、スタッフの件ですが」
「まだ、決まっていない。まずマネージャーからだな」
「マネージャーは決まっています」
「ん?」
「元銀座のやり手ホステスです」
「以前言っていた派遣か?」
「はい」
「他のスタッフだがどうする?」
「全員女性にしようと思います」
「本当か?すると男はお前さん一人か?あはは」
「はい、男の従業員はそれなりのレベルの
教育をしてから働いてもらいます」
「そんな希望者がいるかな、どうしても夜の仕事をする
人間のレベルの低さがいつも問題になるんだ」
「そうですね、とりあえずゲイを探してみます」
「ゲイを従業員にするのか?」
「はい、アメリカのモデル事務所の従業員とか
女性が多く働く職場では男女のトラブルが
起こらないようにゲイの人を雇うんです」
「なるほど、しかしゲイとは求人誌には書けないだろう」
「はい、オープンしてからホームページで募集をかけます」
「まあ好きなようにやってみなさい、もし上手くいったら
業界に改革をもたらせるぞ、
それにゲイも市民権を得られる」
「はい」
「あのう、私にもホステスで働かせてください」
一恵が亮に恐る恐る話をした。
「えっ、どうして?」
小妹が驚いて聞いた。
「だって、ホステスの中に入っていれば
彼女達の不平不満も分かるでしょ」
「ありがとう一恵さん、でも無理しないでください。
こちらも忙しいですから」
亮は一恵の心遣いに頭を下げた。
亮は一恵にスマートフォンを渡し仕事を頼んだ。
「ここに入っているファイル2に入っている女性を
一恵さんのスマートフォンにコピーしてください」
「はい」
一恵は亮が信用してくれスマートフォンを
渡してくれるのがとてもうれしかった。
亮は時計を見て小妹と一恵と美喜の肩を叩いた。
「飯田さん、僕達は今から銀座に行きます」
「そうか、昼飯でもと思ったんだが」
「すみません、明日食べましょう」
「うん、うん。じゃあな」
「はい、では明日11時に行きます」
「おお」
亮は飯田と別れて美也子に電話をかけると
留守番電話になっていた。
「亮これから何処へ行くの?」
「銀座」
初めて日本に来た小妹にとって昨夜も今日も
銀座に行くという事は、銀座は凄いところだと思っていた。
「小妹、何が食べたい?」
「ケーキ、日本のケーキ美味しいんでしょう」
「なるほど・・・」
亮は一恵の顔を見ると笑って小妹の頭を叩いた。
「じゃあ、和食を食べよう」
「はい、ケーキじゃないんだ」
「ケーキはデザートだよ」
「うん」
小妹はうれしそうに亮のそでをつかんだ。
「玲奈さん、お昼一緒にいかがですか?」
亮は玲奈に電話をかけた。
「はい」
「すみませんが、みやびの個室の予約をお願いします。
あなたを含めて五名です。30分後に」
「かしこまりました」
玲奈は冷静を装うっていたが久々に
亮と食事ができるのがうれしくて、
混んでいると思っていた。
みやびの予約で亮の名前を言うと
簡単だったので驚いていた。
みやびに亮たちが着くと入り口で玲奈が待っていて
一恵の顔を見ると一瞬顔がこわばった。
個室に入るとすぐに
亮は一恵に関する出来事をすべて玲奈に話した。
「そうだったんですか」
玲奈が悲しそうな顔をすると一恵は
泣きじゃくり玲奈の手を握った。
「だまされていたんですあの男に、
しかも命まで狙われるなんて・・・」
「気の毒に一文字の一番傍にいた女性なのに」
玲奈が一恵の肩を抱いた。
「玲奈さん、一恵さん敵の元秘書を自分の
傍に置いておくなんて恥ずべき行動なのですが、
一緒にあの男を捕まえませんか」
一恵と玲奈は無言で頭を下げた。
「僕は二人を信じます。
自分の事しか考えない一文字は許せません。
まして麻薬で儲けようなんて人間として最低の男です。
今まで、だまされ、利用され、傷つけられて来た。
みんなであの男にリベンジしましょう」
「はい」
二人が声をそろえて言った。
「まさに花達の復讐だね」
小妹は12歳の時からこの仕事をしていて
初めて冗談が言えるような
和やかな気分になっていた。
玲奈と一恵は以前から知っていたお陰で
親しげに話していていた。
「そう言えば、以前秘書さんが二人
亡くなっていたそうだけど、
玲奈さん聞いた事ありますか?」
亮が玲奈に聞いた。
「あります、二人とも自殺だって私は聞きました。
一文字の子供を堕させられたショックで」
「一恵さん、本当ですか?」
亮は一恵に聞いた。
「はい、自殺とは聞いたけど本当は私のように・・・」
「怪しいわね」
玲奈と一恵は顔を見合わせてうなずいた。
亮はさすが一恵に堕胎の事は聞けずにいると一恵は
それを察して答えた。
「亮さん私は自分で避妊をしていたから大丈夫でした、
それに私より他にお気に入りが何人か居ましたから」
「お気に入り?誰ですか?」
「ジャパンテレビアナウンサーの四条美奈代です」
一恵は迷わず答えた。
「あの、四条美奈代ですか?」
「はい、彼女はジャパンテレビから
情報を盗んで一文字に流して、
成功報酬として多額のお金を受け取っています」
「そうだったんですか」
「玲奈さん、キャビンアテンダント、女優、
広告代理店の社員もいたわね」
「はい」
「一恵さん証拠はつかめませんか?」
亮は一恵に証拠の糸口を見つけて欲しかった。
「はい、会社のサーバーにアクセスできれば
情報は取れます。
パスワードは変えてしまったでしょうけど」
「パスワードは何桁ですか?」
一恵は指を折りながら答えた
「10桁です」
「アルファベットと数字ですよね」
「はい」
「あはは」
亮は突然笑い出した。
「どうしたんですか?」
「大事な会社のパスワードを10桁とは驚きました」
「何通りあるんですか?」
「63の10乗通りです」
「す、すごい。じゃあ解析は無理?」
「いいえ、できますよ」
「えっ?」
亮は簡単に言ってのけた
「こんにちは」
琴乃から突然電話があった。
「あっ、ご無沙汰しています」
「病気は治ったみたいね。
美佐江から連絡が有ったわ」
「はい」
「亮さん、MITで健康科学を学んだわよね」
「はい」
電話の向こうの琴乃の声は異常に
元気だった。
「父の会社がスポーツジムのチェーンを
計画していて協力いただけないかと思って」
「わかりました。でも今度スポーツジムを
渋谷と新宿にオープンしようと思いますが」
琴乃が亮の突然の話に驚いて答えた。
「本当!ぜひ、お話を聞かせてください」
「はい、いつ会えますか?」
「今日の夕方に時間ができます」
「では5時に・・・」
「有楽町でいいですか?」
「はい」
「忙しいわね、亮さん」
玲奈が微笑むと亮は周りの
人間が動いてくれるから
安心して自分がアポを取れたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます