第39話キャシーの思惑

「ははは、キャシーさん良かったですね」

マーティン牧師は微笑んだ

「もう一度確かめましょう。

キャシーさんはアキラを愛していますか?」

「はい」

「アキラさんはキャシーさんを愛していますか?」

「はい」


「それでいいのです。物理的な結婚より二人の

互いの気持ちが大事なのです。

さあ二人の永遠の愛を神の前で誓ってください」

マーティン牧師が言うと二人はうなずいて


「良いときも悪いときも、

富めるときも貧しきときも、

病めるときも健やかなるときも、

死が二人を分かつまで愛し慈しみ

貞節を守ることをちかいます。アーメン」


二人が一緒に言うと

「キャシーさんちょっと待って、貞節を守る

ということは他の女性と・・・」

「うふふ、亮には無理ね。削除しましょう」

マーティン牧師は首をかしげると

二人は誓いの言葉を言い直した。


「では誓いのキスを」

二人は照れながらマーティン牧師の前でキスをした。


「今日からあなたたち二人は永遠の愛で結ばれました」

亮とキャシーは祭壇に礼をした

「指輪は無いですね」

「結婚じゃないのでありません」

「わかりました」

マーティン牧師が困った顔をした。


「マーティン牧師、ありがとうございます」

「わかりました。またおいでください」

二人が教会を出て行く姿をマーティンはじっと見守り

「アキラ、君の愛は世界を救う。

神よあの二人に情け深い御加護をアーメン」

マーティン牧師は右手を高く上げて祈った


「ねえキャシー、今やった事って

結婚じゃないですよね・・・?」

「うん、二人が永遠に裏切らない

約束をしただけよ安心でしょう」

「まあ、裏切りほど怖い事はありませんからね」

亮とキャシーは早朝のセントラルパークを

手を繋いで歩いた。


亮はこれから1ヶ月の熱い戦いに

エネルギーを注入するように手を

挙げて体を思い切り伸ばした。

「愛しているわ。亮」

「僕もです」

二人は公園の中で抱き合い長く熱いキスをした


「そうだ、亮帰ったらどうするの?」

キャシーは亮は日本で死んだ事に

なっていると文明に聞いていた。

「何?」

「日本に帰ったら住むところが無いでしょう」


「えっ?あっそうか。死亡している事になってので、

実家にも戻れないんです。部屋も借りられないし、

まして今まで住んでいた渋谷近づく事も出来ない」


「うふふ。いい方法がある」

「私が東京に家を買うわ、そこに住んで」

「は、はい」

「ただし値上がりする物件にしてね」

キャシーは東京で値上がりする

物件がある事を知っていた。


「わかりました。値上がりがしない地域は

ベイエリア、品川駅周りですね」

そう言ってもキャシーはわからなかった。


「はい、ちょっとNELの真似をしてみようかな」

亮はつぶやいた

「えっ?何」


亮は尚子の部屋に置いてあった。

荷物をスーツケースに詰め込み

尚子と部屋を出た


亮は10時前にキャシーの事務所あるビルに着くと

シンディ、ロイ、千沙子、明日香、友子のいるところへ

亮がスーツケースを転がして入っていった


「おはようございます」

ロイは亮のスーツケースを見て

「そうか、帰るのか」

「はい、12時50分の飛行機で帰ります」

「そうか、時間が無いな」

「はい」


「昨日、DUN製薬から届いた糖尿治療薬の契約書だ。

サインをしておいた持って帰ってくれ」

「はい」

亮とロイは握手をした


「これでお互いに儲かるな」

「はい、アメリカは糖尿病患者が

2000万人を超していますから」

「他にいい物を作ったらすぐに連絡をくれよ」

「了解です」


「おはようございます」

メイクを薄くし髪を切った

パンツスーツ姿のキャシーは

颯爽と入ってきた

「おお」

全員が声を上げた。


「キャシー素敵よ」

シンディが言うと

「ありがとう」

短く切った髪を触りながら亮の顔を見た。

「このビジネスを成功させなくちゃいけないから

 かんばるわ」

弁護士が契約書を亮とロイとシンディに渡した。


「これがスタジオDに関する契約書です」

全員が目を通してサインをして弁護士に渡した。

「さあ、さあ始めるわよ。シンディがんばってね」


「はい、社長候補も何人か上がっているわ」

「分かりました、社長候補が決まったら

私の方から連絡をして承認をいただきます」

キャシーは昨日とは別人のようにキビキビと

していた


「はい」

「日本の商品のカタログを送りますから

 扱うものを選んでください」

千沙子が言うと続いて亮が言った

「縫製は日本製でアピールをしようと思っています」


「そんなに良いの日本の縫製」

シンディが驚いて聞いた。

「はい、あるイタリアブランドのワイシャツは

日本で縫製しています」

「それってどこ?ゼニア?アルマーニ?」


「分かりません、タグは後でつけますから」

「あはは、そうだな」

ロイが大笑いをした

「亮、そう言えば朝からヒーローが

テレビに出ているようだな」

「はい、これで安心して日本に帰れます」


亮はみんなに別れを告げ荷物を持って

キャシーの事務所を出ると目の前に

白いロールスロイスが止まった


「飛行場まで送っていくわよ」

キャシーが窓を開けていった

「ありがとう」

亮は喜んでキャシーの車に乗った


亮は車の中でキャシーをしみじみ見て言った。

「ショートカット似合いますね」

「ありがとう」

「メイクも薄くて良いです」

「ありがとう」

「パンツスーツもいい」

「ありがとう」


褒めまくる亮の言葉でキャシーはうれしくなり

抱きついてキスをした

「これが本当の私なのかも」

「はい、そうですね。これで良い仕事できます」

「はい」

キャシーはうなずいた


亮が11時30に飛行場に着くと美咲と

小妹と新村一恵と友子が待っていた

「美咲さんお疲れ様」

「亮、はい」

美咲は茶の封筒を亮に渡した


「何?」

亮が封筒から取り出したのは自分のスマートフォンだった

「落し物で届いていたそうよ」

「ありがとう、これで助かりました」


亮が荷物を預けてチェックインを済ませると

「お帰りですか?」

ニューヨーク市警のパーカー警部補が声をかけてきた

「あっ、パーカー警部補、どうしたんですか?」

「どうしてもあなたに会わせたい人が居ましてね」

「えっ?」


車椅子に乗った恰幅の良い男性が補助の男性に押されて

入り口の方からやってきた

「上院議員、こちらが」

「ああ、覚えているよ、君が私たちを

助けてくれた命の恩人だ」

「人違いでは?」

亮はとぼけたが


「もしあなたが手当てをしなかったら、

妻は救急車の中で死んでいたそうだ」

スチュアート上院議員は車椅子に座ったまま

涙を流して亮の手を握った


「ミスター・ダン。せっかくお礼を

言っているんだ答えたらどうだ」

パーカーが亮に強く言った。亮は仕方なしに

「スチュアート上院議員良かったですね」

「ありがとう」

「いいえ」

「何かお礼を」


「上院議員気にしないでください、

僕は日本に帰ります」

「これでも私は大統領の側近だ、

なにかあったらなんでも言ってくれ」

「はい、ではヒーローは彼と言う事に

していただけますか」

亮は空港の大きなモニターで

流れている映像を指差して言った。

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