第30話ヒーローの顔

「なるほど」

「惚れられているなら佐川さんを

上手く操縦していくつもり」

亮はしたたかな美咲の言葉に

返事のしようが無かった


「そう言えば一文字がこちらで資金を作ったら、

またDUN製薬を狙ってくるかも知れないわ」

「はい、あの男はしつこい」

亮は嫌な顔をした

「そんなに糖尿の治療薬が欲しいのかしら?」

「世界的に評価が高くてドイツとフランスの

製薬会社と契約が済んでいます」


「一文字が亮が生きているのを知って、

発明者があなたと知ったら

 今度は命より亮の頭脳を狙ってくるかも」

「はい」

「そして媚薬の存在を知ったら

一文字は地の果てまで追いかけてくるわ」


「一文字つながりで媚薬の情報を

知ったら信者が何倍にも増える

NEL教団は欲しいでしょうね」

「そう、だからくれぐれも媚薬の

存在がばれないように気をつけて」

「僕はこのまま、死んでいた事にしていた

方が良いのかも知れないですね」


「磯村!」

ホテルの部室で暗射事件のニュースを観ていた

一文字が突然大きな声をだした

「はい」

「こいつ松平亮じゃないか?」

一文字はテレビを指差した


「松平は死んだはず。しかもここはニューヨークですよ」

「いや、これは松平亮だ。生きていたんだ」

一文字の身体に鳥肌が立った

「会長、考えすぎです。葬儀も確認しました」

「あの男を調べさせる」


「でも、明日帰国しなければなりません」

「わかっている。こっちの優秀な探偵社に依頼しよう」

「わかりました」

「あの男のために命をかける女がいる。何人もだ!」

「確かに、何人かの女が裏切りました」


「何かある。女の気持ちを操る、何かが」

「はい、明日朝早急に」

「あの男に秘密が知りたい」

一文字はその秘密がわかれば日本にも

NRLの宗教法人を作り

世界を自分の物にする事が出来ると思った

~~~~~~~~

翌朝、ベッドの中で携帯電話が鳴った

「おはよう亮」

それはケイトの優しい声だった。

「おはようございます」

「今ホテルのロビーにいるんだけど」

「えっ?」


「い、今降りて行きます」

「うん」

「ラウンジで待っていてください

 朝食食べましょう」

亮は慌てて服を着ると靴下も履かずに部室を

出てラウンジへ行くとケイトが待っていた。


「おはよう」

「おはようございます」

「私、最近とても体調が悪くて」

「どうしたんですか?」

「鬱です」


「そうですか。スタジオDのニューヨーク

出店が決まりそうだから

時々こっちへ来られるのでもう少し会えるかと」

亮はそう言いながらうつ病のひどい時は

自○の可能性があるので心配だった。


「今朝、亮の姿をCNNニュースで見たんだけど」

「えっ」

亮は一瞬、一文字に見られたんじゃないかと

気にかかった。

「何かまずい事でも?」

「僕の天敵が見ていたかもしれない」


「誰?」

「スナイパーに命じて僕を殺そうとした」

「本当!許せない」

おとなしいケイトが珍しく怒っていた。

ケイトはレイバンのグラスケースを亮に渡した。

「夜でも外さないように偏光グラスの

 アビエーターにしたわ」

「ありがとう」

亮はケースからグラスをしてかけてみた。


「似合う」

ケイトが胸を抑えた。

「じゃあ、私帰るわ」

「今夜の食事楽しみです」

ケイトの奥ゆかしさはまるで日本人の様で

愛しかった。

亮はケイトを思い切り抱きしめた。

それが亮にはとても愛しかった


「それとスタジオDのニューヨーク出店が

決まりそうだから

 時々こっちへこられると思う」


「昨日、人が殺されました。僕の目の前で」

「そうよ、これがアメリカなの」

「日本は平和です・・・・」

亮は明るい日が差し込めるホテルの

高い天井を見上げた

「そうだ、亮。昨日テレビに映っていたわ」

「えっ?」


「救急車の後で倒れている人に

何かをしているところ」

「しまった」

亮は一瞬、一文字に見られたんじゃないかと

気にかかった

「何かまずい事でも?」


「僕の天敵が見ていたかもしれない」

「一文字大介?」

「はい」

「とりあえず、はい」

Xは着替えが入ったバックを亮に渡した

「サングラスが入っているから

出来るだけはずさないで」

「ありがとう」

「じゃあ、私帰るね」

「はい、今夜こそ帰ります」


「うふふ、期待しないで待っているわ」

Xが手を振ってホテルを出て行った

亮が部室に戻ると美咲は起きていた

「どうしたの?」

「Xさんが着替えをもってきてくれました」

「大丈夫なの?」

「僕が女性を救えばそれが帰ってくるらしい」

亮がブツブツと言うと


「うんうん。なるほど」

美咲は納得していた

「それより、昨日事件現場で

僕がテレビに映っていたそうです」

「本当?一文字が見たかもしれない」

「やはりそう思いますか」

「はい」

そこに館内電話が鳴った


「Halo」

樫村が電話をかけてきた

「おはようございます。樫村です」

「おはよう」

「朝ごはん一緒にいかがですか?」

「そうね」

美咲は亮の顔を見るとうなずいた


「じゃあ、僕は行きます。

樫村さんに見つかったらやばいですからね」

「いってらっしゃい、私は昨日の

件で市警に行って来るわね」

「はい、お願いしま」

「何かあったら電話をします」

亮はキャシーの5番街の事務所へ

向うため小妹と待ち合わせ


「おはよう、昨日は。うふふ」

「なんだよ、その目は」

「いいなあ、私も抱いてもらいたいなあ」

亮はその言葉で崩れた

「ば、馬鹿を言うな」

「亮、上手そうなんだもん」

「う~ん」


亮は真剣な顔をすると小妹が笑った。

「冗談だよ。あはは」

「ところで、小妹。昨日の乱射事件で

僕がテレビに映ったようなんだ」

「うん、CNNで亮の顔アップに

なっていた。かっこよかったよ」

「なんだってCNN」


「CNNだとまずいの?」

「CNNは繰り返し放送するから一

文字は観ていたかもしれない」

「そうか」

美咲は樫村と朝食をしながら

乱射事件の話をしていた


「昨日は大変でしたね、私にも

連絡をしてくればよかったのに」

「ああ、ごめんなさい。凄く急いでいたから」

「そうですね、團さんがせっかく人命救助をして

 犯人の特徴を覚えていたのに」


「そうなの、まるで犯人扱い」

「團さんの記憶力はそんなに凄いんですか?」

「今度あった時、昨日の樫村さんの

服装を聞いてみたらいいわ」

「全部覚えていますか?」


「抱いた女性の下着の色もデザイン体の

黒子の場所も覚えているそうよ」

「あはは、それを言ったら相手に殴られそうですね」

「きっと殴られた事あるわよ」

二人は亮の話で盛り上がっていた


そこに美咲のもとにパーカー警部補から連絡があった

「原さん。團さんの連絡先わかりませんか?」

「どうしたんですか?」

「放送局が團さんを探しているんです」

「放送局?」

「はい、スチュアート上院議員が取材陣に

東洋人に命を救われたと発言したのです」


「パーカーさん、彼のことは

絶対公表しないでください」

「いいじゃないですか、ヒーローですよ」

「いいえ、実は彼は日本警察の捜査官なんです」

「本当ですか?」

「はい」


「道理で・・・。わかりました、

帰国をした事にします」

「とにかく、後でそちらへ伺います」


電話を切ると樫村が笑っていた。

「團さんが警察官て言って良いんですか?

 あくまで團さんの身分は秘密では」

「大丈夫よ、そこまで調べないわ。今年の5月には

 彼に国家公務員試験に受かってもらいます」


「受かってもらう?国家公務員試験って

難しいじゃないですか」

「大丈夫よ、必ず受かるから」

「はあ」


「それで予算が付いたので

新しい組織がスタートするわ。

樫村さんに参加してもらいます」

「はい」

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